日本人の死因は長年にわたり、がんが1位をしめており、2人に1人ががんになるといわれています。※1
しかし、がん検診に通う時間がない方や、身体に不調が出てから医療機関を受診すればよいと考えている方も少なくありません。
がんによる死亡率を減らし、身体や時間、経済的な負担を減らすためには、早期発見と早期治療が重要です。
本記事では、がんを早期発見、早期治療するための方法と、がん検診の正しい知識を紹介します。
がん検診の知識を高めたい方や、がんを早期発見する方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
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がんはどうして発生するの?
日本人にとってがんは身近な病気ですが、がんが発生する仕組みを知らない方も多いでしょう。
結論からいうと、がんは複数の要因が組み合わさることで発生します。
そのため、がんは誰にでも起こりうる可能性がある病気です。
ここからは、がん発生のメカニズムをはじめ、がん検診を受けない方の5つの理由、日本人の発症率が高いがんについて詳しく解説します。
がん予防や早期発見のために、まずはがんに関する知識を深めましょう。
がん発生のメカニズム
人間の体は約60兆個の細胞で構成されており、細胞は絶えず分裂を繰り返し、体の組織や臓器を作ります。
しかし、細胞が分裂する過程で、外部の影響や発がん物質などの影響により、コピーミスと呼ばれる異常な遺伝子が生じることがあります。
この異常な遺伝子が増殖して増え続けた状態が、がんのはじまりです。
通常、健康な方でも1日に約5,000個ものコピーミスが起こりますが、体内の免疫システムが異常細胞を検出して排除します。
しかし、免疫システムによる攻撃を逃れた異常細胞はがん細胞として生き残ります。
がん細胞は異常な速度で増殖し、5~20年かけてがんとして進行する仕組みです。
がん検診を受けない5つの理由
日本は諸外国と比べてがん検診の受診率が非常に低くいです。欧米のがん検診の受診率が80%以上に対して日本は約35%です。※2
国民のがん検診に関する認識が不十分であり、平成28年におこなわれた世論調査で、がん検診を受けない理由に次の5つが挙げられました。
- 受ける時間がないから
- 健康状態に自信があり、必要性を感じないから
- 心配なときはいつでも医療機関を受診できるから
- 費用がかかり経済的にも負担になるから
- がんとわかるのが怖いから
全体の約30.6%が「受ける時間がないから」と理由を挙げており、忙しい日常生活の中でがん検診を受ける時間がない方が多い傾向です。
日本人の発症率が高いがん
次の表は2019年に国立がん研究センターが調査した、日本人の発症率が高いがんの順位です。※3
順位 | 総数 | 男性 | 女性 |
---|---|---|---|
1位 | 大腸 | 前立腺 | 乳房 |
2位 | 肺 | 大腸 | 大腸 |
3位 | 胃 | 胃 | 肺 |
4位 | 乳房 | 肺 | 胃 |
5位 | 前立腺 | 肝臓 | 子宮 |
男性では前立腺がんが最も多く、女性では乳がんが多いことがわかりますが、男女ともに大腸がん、肺がん、胃がんが上位を占めています。
また、がんによる死亡者数が多い順を調査した結果では、肺がんが最も多く、大腸がん、胃がん、膵臓がん、肝臓がんと続いています。
がんのリスクや進行を防ぐためには、早期発見と早期治療に努めることが健康維持の鍵となるでしょう。
がん検診のメリットは早期発見
がん検診の最大のメリットは、がんの早期発見ができることです。
早期のがんは治療方法の選択肢が広がることで、さまざまな面で負担を軽減できます。
また、早期発見と早期治療は、進行がんに比べて生存率も向上します。
ここからは、がん検診のメリットを詳しく解説するため、早期発見の重要性について考えてみましょう。
費用・身体的な負担が減る
がん検診で早期にがんを発見した場合、治療が軽度で済むため、身体的、経済的な負担が軽減します。
次の表は、5大がんの一つである胃がんを例に、早期がんと進行がんの治療方法や入院期間、費用をまとめたものです。
病期 | 治療法 | 入院期間 | 費用 |
---|---|---|---|
早期がん | 内視鏡手術 | 日帰り~5日程度 | 26万円(自己負担額:約8万円) |
腹腔鏡手術 | 10~14日程度 | 120万円(自己負担額:約10万円)※高額医療制度を利用 | |
進行がん | 外科手術 | 20日前後 | 127万円(自己負担額:約10万円)※高額医療制度を利用 |
抗がん剤治療 | 1年程度 | 92万円(自己負担額:約28万円) |
早期の胃がん治療には、内視鏡手術や腹腔鏡手術が推奨され、開腹手術よりも身体への負担が少なく、日帰り手術から数日の入院で済む場合があります。
一般的に、がんが進行すると治療の種類や回数が増え、自己負担も増えます。
早期にがんが発見できれば、治療が比較的短期間で済み、進行がんのリスクや治療費の増加を抑えられるでしょう。
生存率を上げられる
がんの早期発見と早期治療は、生存率を向上できます。
下記は、胃がん、大腸がん、肺がんのステージ別の5年生存率と10年生存率です。
生存率 | ステージ1期 | ステージ2期 | ステージ3期 | ステージ4期 | |
---|---|---|---|---|---|
胃がん | 5年 | 98.7 | 66.5 | 46.9 | 6.2 |
10年 | 90.3 | 57.0 | 37.2 | 5.8 | |
大腸がん | 5年 | 98.8 | 90.9 | 85.8 | 23.3 |
10年 | 94.8 | 83.0 | 76.2 | 13.8 | |
肺がん | 5年 | 85.6 | 52.7 | 27.2 | 7.3 |
10年 | 67.6 | 34.5 | 13.1 | 2.1 |
参考:全がん協部位別臨床病期別5年相対生存率(2011-2013年診断症例)(2005-2008年診断症例)
がんの早期発見と呼ばれるステージ1期では、5年後や10年後も健やかに暮らせる可能性が高いことがわかります。
しかし、がんが進行するとがん細胞はさまざまな場所に転移、再発を繰り返す可能性が増します。
進行がんは治療が難しくなるため、定期的ながん検診を受けて、早期発見と早期治療をおこなうことが重要です。
がんによる死亡やリスクを減少するために、積極的にがん検診を受けましょう。
がん検診のデメリットは偽陽性・偽陰性・過剰診断
がんを早期発見、早期治療するためには定期的にがん検診を受けることが重要ですが、デメリットも存在します。
- 偽陽性
- 偽陰性
- 過剰診断
ここからは、がん検診を受けるデメリットを詳しく解説します。
がん検診を受ける際は、デメリットも理解したうえで検査を受けましょう。
偽陽性
がん検診では、検査結果ががんではないにもかかわらず、がんと誤診される偽陽性のリスクがあります。
医師の指示に従い、生検やCT検査などの精密検査を受けても、実際にがんが見つからないケースは少なくありません。
偽陽性の診断を受けた場合、追加の検査や費用、時間がかかることで日常生活に影響がおよぶ可能性もあります。
また、将来の健康や生活に対する不安が増し、心理的な負担を感じることもあるでしょう。
ただし、誤診の可能性がある場合でも、精密検査を受けることで自身の健康状態を詳細に把握し、健康管理の改善につなげられます。
偽陰性
がん検診には、偽陽性のリスクだけでなく、偽陰性のリスクもあります。
偽陰性とは、実際にがんが存在しているにもかかわらず、がんではないと誤って診断されることです。
がん細胞の存在が見落とされた場合、細胞の増殖が進行し、治療の開始が遅れるリスクも高くなるでしょう。
早期にがんが発見された場合は手術が可能ですが、がんが進行すると治療方法の選択肢が限られます。
とくに、がんの初期段階では腫瘍が小さく浅い部分にあるため、検診を受けてもがんが検出されない場合があります。
がんは一定の大きさにならないと検査で見つけることが難しい病気です。
早期にがんを発見するためには、定期的にがん検診を受けましょう。
過剰診断
過剰診断とは、本来治療を必要としない微小ながんや進行が遅いがんに対して、不必要な治療をおこなうことです。
がんには、成長が極めて遅いものや、健康に影響を及ぼさないがんなど、治療の必要がない場合もあります。
過剰診断が起こる一因には、医師の知識や診断能力の不足が挙げられます。
がんの診断や判断において経験が少ない医師がいる場合、過剰診断が起こる可能性も少なくありません。
がん検診を受ける際は、がんの診断や治療に特化した医療機関や、科学的根拠にもとづいた検査を受けることが重要です。
がん検診の種類と検査方法
がん検診には、大きくわけて次の2つの方法があります。
- 国が推奨する5つのがん検査(対策型検診)
- 任意型検診
それぞれ検査方法が異なるため、がん検診の受診を検討している方はぜひ参考にしてください。
国が推奨する5つのがん検査(対策型検診)
対策型検診とは、地域の自治体や職場でおこなわれる健康診断のことを指します。
検査できるがんは、次の5種類です。
- 胃がん
- 大腸がん
- 肺がん
- 乳がん
- 子宮頸がん
対策型検診では、日本で5大がんとして広く認識される上記のがんの検査が受けられます。
5大がんは発症率や死亡率が高いといわれており、がんの死亡率を減らすことを目的として、厚生労働省が科学的根拠にもとづいて定めた方法で検診がおこなわれます。
ただし、対象年齢や受診間隔が決められているため、該当しない場合は受診できません。
検診の費用は公費でまかなわれ、無料または定額で受診できます。
任意型検診
任意型検診は、個人でがんによる死亡リスクを下げたい方に向けた医療サービスです。
人間ドックや、健康診断のオプション検診などが該当します。
任意型検診では、対策型検診に含まれていないがん検診や、より詳細な検査を受けられます。
胃カメラやCT検査、MRI検査を利用して、身体の異常や病気、がんの早期発見が可能です。
また、脳ドックや心臓ドックなど、脳や心臓を調べる検査も選択できます。
任意型検診の費用は原則として自己負担ですが、一部の自治体や健康保険組合から補助金が出る場合もあります。
対策型検診とは異なり、受診間隔の制約もありません。20歳以上の成人であれば、誰でも受診できます。
がんを早期発見できる線虫検査「N-NOSE」とは?
線虫検査「N-NOSE」とは、がん特有の匂いを検知する線虫を活用した、がんのリスク検査です。
自宅で簡単に検査ができることから、医療機関を受診する時間がない方に向いています。
ここでは、線虫検査「N-NOSE」の仕組みや特徴、精度について解説します。
検査の仕組み・特徴
線虫検査「N-NOSE」は、がん細胞の匂いに引き寄せられる線虫の性質を利用した尿検査です。
検査方法は、専用のキットで尿を採取し、指定した薬局やドラッグストアに提出または自宅に集荷を依頼します。
線虫検査では尿1滴で15種類のがんのリスクを判定し、がんの早期発見をサポートします。
全身のがんリスクを調べたい方に適しており、胃がんや大腸がん、肺がん、乳がんなどの全身のがんリスクの検査が可能です。
線虫検査「N-NOSE」の費用は、1回検査コースで16,800円(税込)、定期検査コースで15,800円(税込)です。※4
精度を疑問視されている
線虫検査「N-NOSE」は、感度86.3%、特異度90.8%と高精度を謳っていますが、一部のがん検診にかかわる専門学会から精度を疑問視されています。※5
専門学会の報告によると、がん患者10人に対して線虫検査をおこなったところ、全員が陰性と判定されたと結果が出ています。※6
また、検査でハイリスク判定が出た228名のうち、実際にがんと確定診断を受けたのは47名でした。※7
線虫検査「N-NOSE」は手軽に利用できるメリットがありますが、リスク判定が出ても具体的ながんの位置を特定できません。
がんの初期症状が見られる方や、検査に不安がある方は、病院を受診しましょう。
マイクロCTC検査は高精度でがんを早期発見
がん検診を受ける時間がない方や、身体への負担を少なくしたい方には、高精度でがんを早期発見できるマイクロCTC検査がおすすめです。
マイクロCTC検査とは、血中に漏れ出したがん細胞を捕捉し、がんの転移や進行に関与する間葉系の細胞を検出する方法です。
がんを疾患していない方に対する特異度は94.45%と高い精度を誇ります。
マイクロCTC検査の主な特徴は次のとおりです。
- 血液検査で全身のがんリスクを判定
- CTC検査は米国FDA承認済み
ここからは、マイクロCTC検査の特徴を詳しく解説します。
血液検査で全身のがんリスクを判定
マイクロCTC検査は、1回5分の採血で全身のがんリスクの判定が可能です。
検査では血液中から悪性度の高いがん細胞のみを捕捉し、数を明確に数えることで、がんの進行リスクを早期に把握できます。
従来の画像診断やスクリーニング検査では発見が難しい、微小のがん細胞の早期発見も期待できるでしょう。
マイクロCTC検査は全国の提携医療機関でおこなわれており、所要時間は5~10分程度です。
また、痛みや医療被ばくの心配もなく、リラックスして受診できます。
マイクロCTC検査の費用は1回198,000円(税込)と高額ですが、時間や身体への負担を軽減できる点が大きなメリットといえるでしょう。※9
CTC検査は米国FDA承認済み
CTC検査は日本であまり認知されていませんが、米国では一部のCTC検査がFDAの承認を受けており、がんの早期発見をサポートできます。
しかし、米国でFDAの承認を受けているCTC検査は、がんの早期発見といわれる上皮性がんのみしか捕捉できません。※マイクロCTC検査はFDAの承認は取っておりません。
一方、マイクロCT検査は、世界有数のがん研究施設であるMDアンダーソンがんセンターが開発したCSV(細胞表面ビメンチン抗体)を使用し、間葉系がん細胞を高精度で検出できます。
そのため、マイクロCTC検査は特異度が高く、ほかの検査では見逃されがちな早期のがんを発見し、早期治療につなげられます。
偽陰性や偽陽性のリスクも少ないため、より精度の高いがんリスクの評価が期待できるでしょう。
がんの早期発見や検査に関するよくある質問
最後に、がんの早期発見や検査に関するよくある質問を4つ紹介します。
- がん検診にかかる費用は?
- がん検診の流れは?
- PET検査とは?
- 腫瘍マーカー検査とは?
健やかな毎日を送るためには、定期的にがん検診を受けることが重要です。
費用面や検診の流れ、検査方法などに疑問や不安がある方は、事前に確認しておきましょう。
がん検診にかかる費用は?
がん検診にかかる費用は、検診の種類や検査方法により異なります。
対策型検診の費用は国からの補助が受けられるため、数千円で受診可能です。
一部の自治体では、一定の年齢の方を対象に無料クーポンが配布されることもあります。
ただし、対象の会場や医療機関、検診センター以外で受診した場合、補助が受けられない可能性があります。
自治体や組合の公式サイトなどで、事前に確認しましょう。
一方、任意型検診の費用はすべて自己負担です。※9
健康保険の種類により補助金制度が利用できるケースもあるので、事前に確認してみてください。
がん検診の流れは?
がん検診の流れは、対策型検診と任意型検診でそれぞれ異なります。
対策型検診の流れは、次のとおりです。
- 市区町村から案内が届く
- 対象の医療機関を選び、予約を入れる
- 医療機関から問診票、検査キットが届く
- 予約日時に医療機関を受診
- 結果を郵送または医療機関で確認
一方、任意型検診を受ける場合、次の流れで検診がおこなわれます。
- 医療機関に予約を入れる
- 医療機関から問診票、検査キットが届く
- 受診前日、当日の注意事項を確認
- 予約日時に医療機関を受診
- 結果を郵送または医療機関で確認
人間ドックは1泊2日と日帰りから選べる医療機関もあるため、自身にあったプランを選びましょう。
PET検査とは?
PET検査は、がん細胞の活動を画像で確認する方法です。
がん細胞はブドウ糖を多く取り込む性質があり、PET検査ではブドウ糖と似た放射性物質を体内に注射します。
注射後、PETカメラで撮影し、がん細胞の活動状況を把握します。
PET検査は、CTやMRI検査では見つけにくいがんの再発や転移の早期発見が可能です。
検査費用は10万円前後かかりますが、次に該当する方は保険適用が認められます。※10
- がんと診断された方
- がん治療の経過観察をおこなう方
- 抗がん剤の効果を判定するために受診する方
PET検査を受けたは体内に放射線が残っているため、子どもや妊婦との接触は避けるようしてください。
腫瘍マーカー検査とは?
腫瘍マーカー検査は、体内に悪性のがんがある場合に、血液や尿などで特定の物質を検出する方法です。
採血や採尿のみで検査が可能で、腫瘍マーカーの量が増えるとがんの可能性が高まります。
しかし、腫瘍マーカーの結果のみでは、がんの確定診断には不十分です。
なぜなら、ほかの疾患でも腫瘍マーカーが通常の基準値を超えることがあるからです。
そのため、通常はがんの診断の補助として活用します。
腫瘍マーカー検査の費用は基本的に保険適用外です。1項目あたり2,000~5,000円程度の費用がかかります。
まとめ
対策型検診は、全身のがんを検査できないことや、受診間隔が決められていることが懸念されます。
一方、任意型検診は、時間や費用面で受診のハードルが高いと感じる方もいるでしょう。
人間ドックよりも費用を抑えて、短時間で全身のがんリスクを調べたい方には、マイクロCTC検査がおすすめです。
マイクロCTC検査は、通常の画像検査では見逃されやすいがんの早期発見に有効です。
検査前の準備は必要なく、1回5分の採血で全身のがんリスクを評価できます。
自身のライフスタイルにあわせて、定期的にがん検診を受けましょう。
〈参考サイト〉
※1:がん情報サービス|最新がん統計
※2:厚生労働省|低い日本の検診受診率
※3:国立研究開発法人国立がん研究センター|がん罹患数の順位(2019年)
※4:N-NOSE(エヌノーズ)|世界初の線虫がん検査 N-NOSE®
※5:よくあるご質問|尿1滴でわかる!線虫がん検査 N-NOSE®
※6:朝日新聞デジタル|精度が疑問視された線虫がん検査
※7:株式会社HIROTSUバイオサイエンス|「N-NOSE」ハイリスク判定者を対象に追跡調査を実施
※8:マイクロCTC検査 | 血中のがん細胞を捕捉するがんリスク検査
※9:検診費用 | 国立がん研究センター 中央病院
※10:PET検査ネット|PET検査費用について(がん検査と基礎知