腎臓がんは、健康診断や定期健診などの血液検査や、超音波(エコー)検査で見つかるケースが少なくありません。
また、がんのスクリーニングとして腫瘍マーカーを実施した際、異常が発見されることもあります。
万が一、腎臓がんを発症しても、早期であれば腎臓の温存が可能です。
本記事では、腎臓がんの概要・症状をはじめ、血液検査や腫瘍マーカーで確認すべき数値などを詳しく解説します。
腎臓は、再生不能な臓器です。腎臓がんが進行すると、腎臓や周囲の組織を摘出する必要があります。腎臓がんの早期発見のために、ぜひ参考にしてください。
腎臓がんとは?
腎臓がんとは、腎臓の細胞ががん化したもので、腎がんとも呼ばれています。
年間約30,000人の方が腎臓がんと診断されており、とくに、50歳以降の男性に多く発症している傾向です。※1
腎臓がんの罹患数・死亡数は、10年間で1.3~1.6倍まで増加しており、今後も増える可能性があります。※2
次章では、腎臓の働きをはじめ、腎臓がんの概要・症状などを詳しく解説します。
腎臓の働き
腎臓には、下記の働きがあります。
- 血液をろ過する
- 電解質のバランスを整える
- 血圧を一定に保つ
- 血液をつくる
- 骨を丈夫にする
腎臓には、糸球体と呼ばれる毛細血管が約100万個ほど存在しており、体内の老廃物や塩分をろ過し、尿として体外に排出しています。※3
塩分量と水分量をコントロールして、電解質のバランスを整えることで、体を常に弱アルカリ性の状態にし、血圧を一定に保っています。
また、腎臓でつくられる酵素(レニン)も、血圧の調整に欠かせません。血圧の上昇作用があるホルモン(アンジオテンシンⅡ)に働きかけて、分泌量を増減させています。
腎臓から分泌されるエリスロポエチンは、血液をつくるホルモンの一つです。赤血球の産生を促して、血液不足による貧血を防ぎます。
そのほか、腎臓にはビタミンDを活性化させて、カルシウムの吸収を促し強い骨をつくる作用もあります。
腎臓にできる悪性腫瘍
一般的に、腎臓がんは腎臓の細胞ががん化した「腎細胞がん」を指し、同じ腎臓の腎盂尿管から発症する「腎盂がん」とは区別されて、治療法も異なります。
腎臓がんの多くは、近位尿細管と呼ばれる糸球体と腎盂をつなぐ無数の管から発症し、がん細胞の形や性質により、下記に分類されます。
種類 | 発症頻度 | 特徴 |
---|---|---|
淡明細胞型腎細胞がん | 70~85% | 腎臓がんで最も多く、腎臓の静脈内に転移しやすい |
乳頭状腎細胞がん | 10~15% | 腎臓の集合管から発症し、悪性度が高いものから低いものまである |
嫌色素性腎細胞がん | 約5% | 嫌色素の蓄積により発症するタイプで、標準治療が適用されない |
多房嚢胞性腎細胞がん | 約0.4% | 複数の小嚢胞が集合してがんをつくる、非常に稀なタイプ |
主な症状
腎臓がんは、進行にともない、下記の症状が現れる場合があります。
- 血尿
- 痛み・しこり
- 食欲不振・吐き気
- 足のむくみ
腎臓がんの代表的な症状は、血尿と腹部(助骨と腰の間)や背中・腰などの疼痛です。
尿管が閉塞して尿が停滞したり、骨やほかの臓器に転移したり、がんの成長・広がりにより強い痛みが生じます。また、右上腹部にしこりが生じる場合もあります。
そのほか、腎臓機能が低下すると、血液のろ過や体内の塩分量・水分量の調整ができなくなり、食欲不振・吐き気、足のむくみが生じるケースも多いです。
腎臓がんは血液検査でわかる?
血液検査は、腎臓の機能をはじめ、全身の健康状態の評価に有用な検査です。
ここからは、血液検査で腎臓がんの発見が可能かどうか、詳しく解説します。
腫瘍マーカーがない
腫瘍マーカーとは、健康時には検出されない特定の物質(タンパク質・ホルモンなど)を測定する検査です。
がんの種類・臓器により、さまざまな腫瘍マーカーがあり、がんの発見や診断のサポート、経過観察、治療の効果判定などに役立ちます。
しかし、腎臓がんには特定の腫瘍マーカーがありません。そのため、血液検査のみで腎臓がんを見つけることは困難です。
数値の異常は確認できる
血液検査は、腎臓の機能・状態をある程度知ることが可能です。
腎臓が何らかの病気が発症している場合、次の数値に異変がみられます。
- 白血球・血小板
- CRP(C反応性タンパク)
- LDH(乳酸脱水素酵素)
- Cr(クレアチニン)
- ALP(アルカリフォスファターゼ)
- AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)
- ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)
腎臓の働きが悪くなると、白血球と血小板の数値が低くなります。
そして、炎症反応として広く用いられている「CRP」をはじめ、細胞内で糖質をエネルギーに変化する酵素の「LDH」、タンパク質の老廃物である「Cr」の値が高くなります。
また、腎臓と肝臓の働きに関連する酵素「ALP」「AST」「ALT」の値も上昇するケースが多いです。
腎臓がんの検査方法
腎臓がんの検査方法は、下記の4種類です。
- 超音波(エコー)検査
- CT・MRI検査
- 生検
- 骨シンチグラフィ
次章では、それぞれの検査方法を詳しく紹介します。
超音波(エコー)検査
超音波(エコー)検査は、腎臓がんの発見に最も有効な検査の一つです。
健康診断や定期健診で超音波(エコー)検査を実施した際に、腎臓がんが見つかるケースが少なくありません。
体の表面から、超音波を発するプローブをあてて、腎臓の形・大きさ、がんの有無や位置などを観察します。
検査が短時間でおこなえることや、痛みがない点も、超音波(エコー)検査の強みです。
しかし、超音波(エコー)検査のみでは腎臓がんの確定診断はできません。がんの疑いがある場合、画像検査の結果とあわせて総合的に判断します。
CT・MRI検査
一般的に、腎臓がんが疑われる場合は、造影剤を使用したCT検査をおこないます。
静脈から造影剤を注入して、画像にコントラストをつけることで、がんの大きさ・位置、ほかの臓器への転移、動脈・静脈の流れなどが把握できます。
CT検査は、検査時の痛みはありませんが、X線を使用して撮影するため、被ばくは避けられません。
なお、腎臓機能の障害がある方や、造影剤に対するアレルギーがある方には、MRI検査がおこなわれます。
また、CT検査のみで判断ができないときも、MRI検査を追加するケースが多いです。
MRI検査は、骨の影響を受けにくいため、がんと正常組織を区別しやすい特徴があります。
しかし、磁気に反応する金属が体内にある場合は、MRI検査は受けられません。
生検
生検とは、より正確な診断のためにおこなう検査です。がんが疑われる病変の組織を採取して、顕微鏡で詳しく調べ、病理学的に判断します。
腎臓がんの場合、うつ伏せの状態で超音波(エコー)で位置を確認しながら、細い針を刺して組織の一部を採取します。
腎臓の生検は、局所麻酔を使用するため、痛みはありませんが、1~2泊程度の入院が必要です。
稀に、腎臓の周囲から出血するケースがありますが、多くの場合安静にすれば自然と体に吸収されます。
骨シンチグラフィ
骨シンチグラフィは、がんが骨に転移していないかを調べる検査です。通常、症状や検査結果により、骨に転移している可能性が高い場合に実施します。
静脈から、骨の代謝や反応に集まる放射性医薬品を注射し、特殊なカメラで撮影して全身の骨の状態を確認します。
薬が全身に浸透するまで、3~4時間ほどの待機が必要です。
CT検査と同量の被ばく線量がありますが、薬による副作用はほぼありません。
腎臓がんの治療方法
腎臓がんには、下記の治療方法があります。
- 手術
- 放射線治療
- 薬物療法
- 凍結療法
治療方法は、がんの大きさや転移の有無、患者の状態や年齢、希望などにより選択されます。次章で詳しく解説します。
手術
腎臓がんは、できる限り手術でがんを取り除き、根治を目指します。
腎臓がんの主な手術方法は、次のとおりです。
- 部分切除術
- 腎臓摘出術
- リンパ節郭清術
- 静脈内腫瘍塞栓摘除術
がんが腎臓に留まっていることを前提に、がんの直径が4cm以下であれば、腎臓の一部と周辺組織のみを切除する「部分切除術」がおこなわれます。
腎臓を温存できることが、大きなメリットです。
一方、がんが4cm以上に成長している場合は、腎臓そのものをすべて摘出する「腎臓摘出術」が実施され、がんの位置により、副腎も取り出します。
また、リンパ節への浸潤・転移がみられる際は、周囲のリンパ筋を切除する「リンパ節郭清術」もおこないます。
静脈内腫瘍塞栓摘除術は、がんが血管(下大静脈)まで浸潤した場合におこなわれる手術法です。腎臓やリンパ筋とともに、血管内のがんを切除します。
多くの場合、これらの手術は腹腔鏡下手術、ロボット支援腹腔鏡下手術(ダビンチ手術)が可能です。
開腹手術に比べて体の負担が少なく、早期に社会復帰できるメリットがあります。
放射線治療
放射線治療は、腎臓がんの転移巣に対する治療法です。がんが転移した臓器や骨に放射線をあてて、がん細胞を破壊して進行を抑制します。
また、症状を緩和する効果も期待できます。
一般的に、腎臓がんそのものは放射線治療の対象になりません。しかし、手術が困難なときに用いられる場合があります。
薬物療法
薬物療法は、手術前にがんを小さくする目的で使用する場合や、手術でがんの切除が難しいケースにおこなう治療法で、通院治療が可能です。
腎臓がんに対しては、3種類の薬物療法があります。
- 分子標的薬
- 免疫チェックポイント阻害薬
- サイトカイン療法
分子標的薬とは、がん細胞の増殖・転移に関わる特定の分子を、遺伝子レベルで阻害する薬です。
腎臓がんに対しては、チロシンキナーゼ阻害薬の「スニチニブ」「ソラフェニブ」や、mTOR阻害剤である「テムシロリムス」「エベロリムス」などが使用されています。
免疫チェックポイント阻害薬は、免疫細胞の力を回復させて、がん細胞を排除させる薬です。腎臓がんの治療には、ニボルマブ(オプジーボ)が使用されています。
サイトカイン療法は、インターフェロンαやインターロイキン2などのサイトカインを使用し、免疫細胞やタンパク質の働きを強めてがん細胞を攻撃する治療法です。
凍結療法
凍結療法とは、針の先端部を超低温にし、がん細胞を凍結して破壊する治療法です。
4cm以下の比較的早期な腎臓がんにおこなわれるケースが多く、CTやMRIで位置を確認しながら、腰または背中の皮膚から針を挿入して腎臓のがんを凍結します。
手術と比べて体の負担が少なく、また、腎臓の機能低下が軽度で済むメリットがあります。
治療時は2時間程度ですが、3~4泊ほどの入院が必要です。
マイクロCTC検査は採血のみでがんリスクを判定
マイクロCTC検査とは、採血のみで全身のがんリスクがわかる画期的な検査方法です。
血中に漏れ出したがん細胞そのものを捉えて個数を明示するため、血液検査よりもがん細胞を検出する精度が高いことが特徴です。
また、従来の画像検査に比べて、非常に早い段階でがん細胞を検出するため、無症状のがんの早期発見につながります。
ここからは、マイクロCTC検査の特徴と検査の流れ、費用を紹介します。
検査は1回5分の採血のみ
マイクロCTC検査は1回5分で終了します。
スキマ時間を利用して検査が受けられるため、仕事を休んだり、スケジュールを調整したり、手間をかける必要はありません。
手軽にがんリスクを把握できることはマイクロCTC検査のメリットの一つです。
また、採血のみでがんのリスクが明確になるので、食事制限はもちろん、検査薬の投与や医療被ばくの恐れもありません。
短時間かつ体の負担が少ない検査を受けたい方は、マイクロCTC検査がおすすめです。
高い精度・迅速な検査体制を実現
マイクロCTC検査は、世界有数のがん研究治療施設である、米国の「MDアンダーソンがんセンター」のCSV抗体を用いた独自の検査手法を導入しています。
がん細胞の検出においては、特異度94.45%と非常に高い精度を実現しています。※4
また、国内に自社検査センターを設けている点も、マイクロCTC検査の強みです。
海外の検査機関に血液を輸送する場合、検査までに日数がかかり、血液が劣化して正確な結果が得られないケースも少なくありません。
マイクロCTC検査は、採取した血液を速やかに自社検査センターで分析し、約1週間 2週間前後で結果確認ができる体制を整えています。
検査の流れ・費用
マイクロCTC検査の流れを紹介します。受診する方はぜひ参考にしてください。
- クリニックと検査日時を選択
- 問診票を記入・予約確定
- 検査(採血)
- 検査結果の確認
マイクロCTC検査は、全国の提携クリニックで導入しているため、都合のよいクリニックを選ぶことが可能です。
まずは、公式サイトから受診するクリニックと日時を選び、問診票を記入して予約を確定しましょう。なお、はじめての方は会員登録が必要です。
検査当日は予約時間の10分ほど前に来院し、受付を済ませてから検査を受けましょう。
検査結果が確定すると、登録先のメールアドレスに通知が届きます。検査から結果の確定までの期間は、2週間前後です。検査結果はいつでもマイページから確認できます。
マイクロCTC検査は、1回198,000円(税込)です。※5
腎臓がんに関するよくある質問
最後に、腎臓がんに関するよくある質問を紹介します。
同じ疑問を抱いている方は、ぜひ参考にしてください。
尿検査でわかる?
腎臓の機能に何らかの異常があると、尿検査の尿タンパク、尿潜血、尿糖、尿沈渣、 尿比重などの数値が影響されます。
しかし、腎臓がんの直接的な発見にはつながりません。
尿検査で腎臓の病気が疑われた場合、CT・MRI検査などで原因を探り、がんが見つかるケースもあります。
発症する原因は?
腎臓がんの発症には、下記が深く関与しています。
- 生活習慣
- 化学物質
- 遺伝性症候群
生活習慣による肥満は、腎臓の機能に影響を及ぼし、腎臓がんのリスクが約2倍増えることがわかっています。※6
そして、タバコも腎臓がんのリスクを最大1.5倍まで増加させます。※7
また、塩分(ナトリウム)を多く含む食事を好む方も注意が必要です。血中のナトリウム濃度が上昇すると血液量が増加し、高血圧を介して腎臓がんになりやすくなります。
そのほか、カドミウムやアスベストなどの化学物質、フォン・ヒッペル・リンドウ病(VHL)、バート・ホッグ・デュベ症候群(BHD)などの遺伝性症候群も、腎臓がんを引き起こすリスク因子です。
初期症状はある?
多くの場合、腎臓がんの初期症状はありません。
そのため、健康診断やほかの病気の検査などで見つかるケースが多いです。
比較的初期の段階で現れる代表的な症状は、血尿です。
最初は血液の量がごく僅かなため、顕微鏡で確認しない限り発見できません。しかし、がんが進行すると肉眼でわかるほど尿が赤くなります。
異変を感じた際は、できる限り早く泌尿器科を受診しましょう。
まとめ
本記事では、腎臓がんの症状・検査方法・治療方法を中心に解説しました。
多くの場合、初期の腎臓がんは無症状であり、健康診断や人間ドックなどで偶然発見されるケースが少なくありません。
腎臓がんの発見には、超音波(エコー)検査やCT検査・MRI検査が非常に有用です。また、血液検査でも腎臓の機能や状態を確認できます。
血尿、痛み・しこり、食欲不振・吐き気、足のむくみなどがある際は、医療機関に相談しましょう。
腎臓がんをはじめ、全身のがんリスクを把握したい方にはマイクロCTC検査がおすすめです。
1回5分の採血のみで、高精度・高品質のがんリスク検査が受けられます。
クリニック検索から検査結果の確認までWeb上で完結するため、ライフスタイルを崩さず、スムーズに受診できます。
自身の健康状態を把握できていない方は、マイクロCTC検査を活用してがんの早期発見を目指しましょう。
〈参考サイト〉
※1:国立がん研究センター がん統計|腎・尿路(膀胱除く)
※2:国立がん研究センター 集計表|全国がん罹患データ、全国がん死亡データ
※3:一般社団法人 日本腎臓学会|腎臓の構造と働き
※4、※5:マイクロCTC検査 | 血中のがん細胞を捕捉するがんリスク検査
※6:国立がん研究センター がん対策研究所|肥満度(BMI)と腎がんとの関係について
※7:国立がん研究センター がん対策研究所|飲酒、喫煙と腎がんの関連について