膀胱がんの検査とは?主な症状・原因や必要な診断方法・ステージ別の治療法を解説

棒傲岸の疑いを指摘されたとき、病気や検査についてさまざまな不安を感じるでしょう。

膀胱がんは膀胱に発生するがんの総称であり、膀胱がんと特定するうえではさまざまな検査が必要です。

本記事では、膀胱がんの基本的な知識から、確定診断をおこなうための検査方法、がん発見後の追加検査を詳しく解説します

また、最新の「マイクロCTC検査」の利点や具体的な実施方法もあわせて紹介します。

膀胱がんに対する理解を深め、適切な検査と治療を選ぶように有効活用してください。

膀胱がんとは?

膀胱がんは、膀胱の内側にある上皮細胞から発生するがんの一種です。

主に成人に多く見られ、その発症率は年齢とともに増加します。

日本では男性に多く、女性に比べて2〜4倍の発症率が報告されています。膀胱がんの理解を深めるために、まずは基本的な情報を整理しましょう。

膀胱に発生するがんの総称

膀胱がんは、膀胱に発生するがんの総称です。

膀胱がんでは、がんの進行度や発生上皮により、さまざまな種類がありますが、最も頻発する膀胱がんは移行上皮がんです。

移行上皮とは、膀胱の内側をおおう上皮細胞であり、尿を貯めておくための、膀胱の拡張と収縮の役割を担っています

移行上皮から発生したがんが、移行上皮がんであり、膀胱がんの90%以上を占めます。

ほかにも、腺がんや扁平上皮がんなど、まれなタイプのがんも存在しますが、全体的に割合は少ないです。

主な症状には、血尿や頻尿、排尿時の痛み、尿が残る感じ、切迫した尿意などがあります。

膀胱がんは初期段階では無症状のことがほとんどです。症状が現れたときにはすでに進行していることが多いため、早期発見が重要です。

膀胱がんの原因

膀胱がんの原因として一般的に知られているのは、喫煙、加齢、アルコール、遺伝などです。このうち膀胱がんの原因として、最も影響が大きいのは喫煙です。

タバコの煙には多くの発がん性物質が含まれており、膀胱がんを含むさまざまながんの原因となり得ます

さらに、化学物質に長期間さらされることもリスク要因となるため、染料やゴム、皮革などの製造業に従事する方々は膀胱がんのリスクが高いです。

また、慢性的な膀胱炎や寄生虫感染も膀胱がんの原因の一つです。

膀胱がんの種類別の症状

膀胱がんの症状は、がんの種類や進行度によって異なります。

次に解説するのは、膀胱がんの浸潤性(進行度)による分類です。

膀胱がんには大きく分けて表在性膀胱がん、浸潤性膀胱がん、上皮内がんの3つのタイプがあります。

表在性膀胱がんの症状

表在性膀胱がんは、膀胱表面の粘膜にとどまり、筋層には広がっていないがんです。

表在性膀胱がんの症状は、血尿が最も一般的で、ほかに排尿時の痛みや頻尿が見られます。

がんが膀胱の内側に向かって成長するため、膀胱鏡検査で確認される場合が多いです。

進行が比較的遅く、治療によって完全に取り除くことが可能です。

浸潤性膀胱がんの症状

浸潤性膀胱がんは、膀胱の筋層までがんが広がっています。がん組織が膀胱の壁を越えて周囲の組織や臓器に広がる可能性もあります。

浸潤性膀胱がんの主な症状は、血尿や排尿時の痛み、下腹部の痛みなどです。

また、がんが進行すると、腰や骨盤の痛み、体重減少などの全身症状が現れる場合もあります。転移のリスクが高いため、早期発見と治療が重要です。

上皮内がんの症状

上皮内がんは、膀胱の表面に隆起せず、粘膜に沿って広がるがんです。

主な症状は血尿や排尿時の痛みですが、浸潤性膀胱がんと同様に、進行すると全身症状が現れる場合があります

上皮内がんは悪性度が高く、徹底的な治療が必要です。

膀胱がんの症状は膀胱炎と似ていますが、抗生物質を服用しても改善しない場合は膀胱がんの可能性を考えましょう。

また、膀胱がんの症状が現れた場合には、すぐに専門医に相談してください。

膀胱がんを確定診断する検査方法

膀胱がんを早期に発見し、適切な治療をおこなうためには、正確な診断が欠かせません

次では、膀胱がんを確定診断するための主要な検査方法を詳しく解説します。

尿検査

膀胱がんの初期スクリーニングには尿検査が一般的に使用されます。

尿検査は簡単かつ侵襲性が低いため、患者の負担が少ない検査です。

膀胱がんの初期症状の一つである血尿の有無と、尿中の腫瘍マーカー(がんによってつくられる特徴的な物質)を調べられ、膀胱がんの特定に役立ちます。

また、血尿には肉眼的血尿と、顕微鏡的血尿があります。

肉眼的血尿は目視で尿に血の混入が判定できますが、顕微鏡的血尿は目視ではわからず、顕微鏡でなければ血の混入を判定できません

膀胱がんの初期症状で最も多く発生する症状は、肉眼的血尿です。
とくに膀胱がんでは、血尿以外の症状が一切発生しない「無症候性血尿」になる場合が多くあります。

もし、膀胱がんの可能性を少しでも感じた場合は、尿検査のみでも医療機関へ相談してみてください。

尿細胞診

尿細胞診は、尿中に含まれる細胞を顕微鏡で観察し、がん細胞の有無を確認する検査です。

尿検査と同様に、患者への侵襲性が低いため、スクリーニング検査として実施される場合が多いです。

尿を特殊な染色法で処理し、病理学的にがん細胞を検出します

また、尿細胞診でがん細胞が発見された場合、がん細胞の発生源は、膀胱または上部尿路(腎う・尿管)のどちらかであり、尿細胞診のみでの完全な特定はできません。

尿細胞診後は、がん細胞発生臓器の特定のために、さらに詳細な検査をおこなう場合が多いです。

尿細胞診は、膀胱がんの早期発見と診断に重要な役割を果たしています。

超音波検査

超音波検査は、膀胱内の異常を画像で確認する非侵襲的な検査方法です。

超音波を使用し、膀胱内の腫瘍や異常をリアルタイムで観察できます。痛みも伴わないため、人間ドックや検査機関で数多く実施されています。

とくに、がんの位置や形、臓器の形や状態、周辺の臓器の関係などを確認するのに効果的です。

膀胱の観察では、検査の際に膀胱内を尿で充填し、超音波装置を用いて腫瘍の位置や大きさを詳細に確認します。

膀胱がんがある場合、膀胱の内膜に凹凸が見られたり、腫瘍の疑いがある所見が得られたりします。

超音波検査は、患者への侵襲性が低く、多くの検査機関でスクリーニング検査として取り入れられており、医療機関で受けやすい検査の一つです。

膀胱鏡検査

膀胱鏡検査は、膀胱内部を直接観察し、膀胱がんを診断する方法です。

尿検査や超音波検査などにより、膀胱がんを疑う所見が得られた場合に実施されます

膀胱鏡検査では内視鏡を尿道に挿入し、膀胱内を詳細に観察可能で、膀胱に加えて尿道や前立腺の観察も可能です。

検査時にはゼリーを使用し痛みを抑えますが、男性の場合は前立腺部分が狭く、痛みを伴うことがあります。

一方、女性の場合は男性と比べると、痛みは少ないといわれています。

もし膀胱鏡検査で異常が発見された場合、内視鏡により組織を採取する、病理検査が必要です。

膀胱鏡検査は、膀胱がんの確定診断に最も有効であり、病変の詳細な評価が可能です。

膀胱がん発見後の検査方法

膀胱がんが発見されたあと、さらなる詳細な検査がおこなわれ、がんの進行度や広がりを評価します。

次では、 膀胱がん発見後の主要な検査方法を解説します。

CT検査

CT検査(コンピュータ断層撮影)は、膀胱がんの広がりや転移の有無を評価するための重要な検査です。

CT検査はX線を利用した検査で、さまざまな方向からX線を照射し、X線の吸収率をコンピューター解析にかけ、体の断面画像を作成します。

体の断面画像の評価により、がんの大きさや位置、周囲の組織や臓器への浸潤の程度を詳細に判定します

検査の時間は10〜15分程度です。検査中はベッドが自動的に動くため、リラックスして検査に望めます。

しかし、ペースメーカーや除細動器などの人工物が体内にある場合は、検査に影響を及ぼす可能性があるため、医師に必ず相談してください。

CT検査は膀胱のみでなく、腎臓、尿管、リンパ節などの周囲臓器の状態も確認でき、治療計画の立案において欠かせない検査です。

MRI検査

MRI検査(磁気共鳴画像法)は、がんの浸潤度や周囲組織への影響をより詳細に評価するためにおこないます。

MRIの原理は、CT検査と似ていますが、強力な磁場と電波を用いて体内の詳細な画像を作成している点が異なります

また、CTスキャンよりも軟部組織の描写に優れており、骨盤内の構造やリンパ節の状態を評価するのに有効です。

検査の時間は15〜45分とCT検査より長いです。ベッドが自動的に動く点と、ペースメーカーや除細動器などの人工物が体内にある場合は検査に影響を及ぼす点はCT検査と同様になります。


MRI検査では、検査中に検査装置から工事現場に例えられるくらいの大きな音が発生します。

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)は、全身麻酔または腰椎麻酔のもと、尿道から内視鏡を挿入し、膀胱内の腫瘍を切除する手術です。

一般的には、切除したがん組織に対して病理診断をおこない、がんのステージやグレードを決定するための検査として実施されます

進行があまり進んでいない腫瘍の場合は、経尿道的膀胱腫瘍切除術によりすべて取り切る治療として実施されます。

手術時間は1時間程度で、通常は1~2日程度で退院可能です。

経尿道的膀胱腫瘍切除術は、開腹手術より簡易的かつ侵襲性の低い手術ですが、一般的な麻酔や手術に伴う合併症のリスクがあります。

経尿道的膀胱腫瘍切除術における主な合併症は、膀胱穿孔(腫瘍切除の際に、膀胱に穴があいてしまう)、術後出血、尿路感染症、尿道狭窄などです。

経尿道的膀胱腫瘍切除術の実施を検討する場合は、担当医や医療機関とよく相談し、実施におけるリスクや効果を理解しておきましょう。

マイクロCTC検査は採血のみでがん細胞を捕捉

膀胱がんの診断やモニタリングにおいて、マイクロCTC検査は最新の技術として注目されています。

マイクロCTC検査は、血液中のがん細胞を採血のみで捕捉し、がんの存在や進行度を評価可能です。

次に、マイクロCTC検査の詳細について解説しています。

マイクロCTC検査の仕組み

マイクロCTC検査は、血液中の循環がん細胞(CTC)を検出する技術です。

がん細胞は血流にのって体内を移動するため、血液中のCTC量から、がんの存在や進行度を評価できます

専用の装置を用いてCTCを捕捉し、詳細な分析をおこない、リアルタイムでがんの状態をモニタリングできます。

検査時間・費用の負担を軽減

マイクロCTC検査は、採血のみでおこなえるため、従来のがん診断方法に比べて時間と費用の負担を軽減できる検査です。

また、通常のがん診断ではCTやMRI検査、内視鏡などの多くの検査が必要となり、時間と費用が大幅に必要です。

一方、マイクロCTC検査は、外来で簡単に実施でき、患者の経済的負担も抑えられます。

マイクロCTC検査をおすすめできる方

マイクロCTC検査は、とくに次の方におすすめです。

  • がんの家族歴がある方
  • がん治療後の再発リスクが高い方
  • 定期的なモニタリングが必要な方

また、膀胱がんの再発リスクが高い患者さんでは、早期発見が必要となるため、マイクロCTC検査はおすすめです。

膀胱がんステージ別の治療法

膀胱がんの治療は、がんのステージによって大きく異なります。

がんステージ別に適した治療法を理解し、最適な治療方法を考えてみましょう。

ステージ1

ステージ1の膀胱がんは、筋層に浸潤していない表在性がんです。

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)が主な治療法となり、内視鏡を使って膀胱内のがんを切除します。

また、経尿道的膀胱腫瘍切除術により採取された腫瘍組織へ病理診断がおこなわれ、術後治療の方向性を決定します

膀胱内に抗がん剤やBCG(結核菌の一種)を注入する膀胱内注入療法が一般的で、上皮内がんや筋浸潤を伴う高リスクがんだった場合、再度の経尿道的膀胱腫瘍切除術がおこなわれる場合があります。

ステージ2・3

ステージ2・3の膀胱がんは、筋層に浸潤しているが、転移はしていないがんです。

一般的な治療の流れは、膀胱全摘出術→病理診断→術後療法です。

術後療法では、薬物治療のみではなく、化学放射線治療や、救済治療(治療効果が十分ではない場合におこなう治療法)などを総合的におこない、再発リスクを減少させます

また、膀胱全摘出術がおこなわれる際には、尿を体外に排出するための尿路変向(変更)術もあわせておこなわれます。

高齢の場合、化学放射線療法を用いて膀胱を温存する方法も選択肢の一つです。

ステージ4

ステージ4の膀胱がんは、遠隔転移がある進行がんであり、全身的な治療が必要となります。

第一選択は、プラチナ製剤を含む化学療法が一般的です。

治療効果が認められた場合は、膀胱全摘出術や転移部位の手術も検討されます

また、免疫療法や新しい分子標的薬も治療選択肢の一つです。

治療の目的は延命と症状緩和であり、患者のQOL向上に重点が置かれます。

膀胱がんの検査に関するよくある質問

膀胱がんの検査や治療に関して、多くの方が抱える疑問について解説します。

膀胱がんの検査や治療の理解をさらに深めてください。

何科を受診する?

膀胱がんの診断や治療は、主に泌尿器科でおこなわれます。

泌尿器科は、膀胱を含む泌尿器系の疾患全般を専門とする診療科で、尿検査や画像診断を通じて膀胱がんの有無を確認します

初めての診察では、症状や病歴を詳しく聞かれ、必要な検査がおこなわれます。

早期発見が治療成功の鍵となるため、膀胱がんが疑われる場合は早めに泌尿器科を受診しましょう。

検査は痛い?

膀胱がんの大半の検査は一部痛みを伴う検査もありますが、おおむね耐えられる程度の不快感です。

たとえば、尿検査や超音波検査は痛みを伴わない検査であり、患者への負担は低いです。

一方、膀胱鏡検査は尿道から内視鏡を挿入するため、多少の不快感や痛みを感じる可能性があります

しかし、医師や看護師が検査中に適切なサポートをおこなうため、痛みへの不安がある場合にはあらかじめ医師や看護師へ相談しておくとよいでしょう。

治療は入院が必要?

膀胱がんの治療が必要になった場合、入院の必要性は、がんの進行度や選択される治療法により異なります。

初期段階の膀胱がんであれば、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)が選択される場合が多く、数日間の入院が必要です。

進行した膀胱がんの場合は、膀胱全摘出術や、大きな手術が必要となり、数週間の入院が必要となります。

また、術後の経過観察や追加の治療(化学療法や放射線療法)をおこなうために、再度入院が必要になるケースも多いです。

しかし、外来でおこなえる治療法もあり、たとえば、膀胱内に抗がん剤を注入する治療や、一部の化学療法は外来で受けられます。

治療の選択肢や必要な入院期間については、主治医と相談し、自身に最適な治療計画を立てましょう。

まとめ

膀胱がんは早期発見と適切な治療が重要です。

症状やリスク要因を把握し、疑わしい症状があればすぐに泌尿器科を受診して適切な検査を受けてください

一般的な検査方法には尿検査、尿細胞診、超音波検査、膀胱鏡検査がありますが、さらにマイクロCTC検査の利用により、早期発見や治療効果のモニタリングが可能です。

膀胱がんは初期症状がわかりづらく、発見されたときには進行が進んでいる場合も多いがんです。

健康管理を徹底し、定期検診を欠かさないようにしましょう。

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