膀胱がんの疑いがある、あるいは膀胱がんと診断を受けたとき、進行速度が気になる方もいるかもしれません。
膀胱がんの進行速度は、種類・ステージにより大きく異なります。
がんが膀胱の粘膜内に限局していれば5年生存率は87.3%と高い数値です。しかし、遠隔への転移がある場合は9.5%まで低下します。※1
本記事では、膀胱がんの概要をはじめ、種類・症状・リスク因子、進行速度やステージ別の治療法を詳しく解説します。
膀胱がんの知識を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
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膀胱がんとは?

膀胱がんとは、骨盤のなかにある膀胱の細胞ががん化したものです。膀胱がんの90%以上は膀胱の内部をおおう尿路上皮に、約10%は腎盂・尿管に発症します。※2※3
60歳以降の高齢者に好発し、罹患数の男女比は3:1と男性に発症しやすいです。※4
はじめに、膀胱がんの種類・症状・リスク因子を紹介します。
膀胱がんの種類
膀胱がんには、下記の種類があります。
- 非浸潤膀胱がん
- 浸潤膀胱がん
- 上皮内膀胱がん
非浸潤膀胱がんは、膀胱の粘膜下層までにがんが留まっている状態を指します。膀胱の内腔に向かって成長しますが、膀胱壁のなかには入りません。
一方で、浸潤膀胱がんは膀胱内腔へ突出し、膀胱壁の深部へ浸潤して筋層まで及ぶことから、悪性度は高いといわれています。
また、周辺のリンパ節や肺・肝臓などの遠方の臓器に転移するリスクが高いです。
上皮内膀胱がんは、粘膜に沿ってがん細胞がばらまかれた状態で、表面に隆起せず粘膜が少し赤くただれている程度にしか見えない特徴があります。
筋層浸潤がんに進展する可能性や再発のリスクが高いため、早期治療が重要です。
膀胱がんの症状
膀胱がんの主な症状は、下記のとおりです。
- 無症候性血尿(血尿)
- 頻尿・排尿痛
- 残尿感
- 尿意切迫感
膀胱がんの代表的な症状は、無症候性血尿(血尿)です。
無症候性血尿は、痛み・発熱などの症状は伴わず、いつも血尿になるわけではありません。そのため、緊急性はないと放置して受診が遅れる場合が多いです。
頻尿も膀胱がんによくみられる症状の一つです。がんが尿管を塞ぐと圧力がかかり、1日の排尿回数が8回以上に増えて残尿感が生じることもあります。
また、排尿時に痛み・灼熱感が伴ったり、急に我慢できないほどの強い尿意を覚えたりと、さまざまな症状が現れます。
膀胱がんが進行した場合、下腹部・背中・腰などの痛みや足のむくみなどが出て、食欲不振・体重減少が起こるケースも少なくありません。
膀胱がんのリスク要因
膀胱がんの最も大きなリスク因子は、喫煙です。
喫煙は男性の膀胱がんの50%、女性の膀胱がんの30%に関与しているといわれており、喫煙者は非喫煙者に比べて2~4倍リスクが増加します。※5※6
そのほかの膀胱がんの危険因子として、下記が考えられています。
- 化学物質
- 特定の医薬品
- 家族歴
過去に、染料や樹脂製品、薬品などで使用されたナフチルアミン、ベンジジン、アミノビフェニルなどの化学物質への長期間ばく露は、膀胱がんの発症リスクを高めます。
フェナセチン(鎮痛剤)の過剰使用やシクロホスファミド(抗がん剤)の長期使用も、膀胱がんの発症に深く関与していることがわかっています。
また、膀胱がんの一度近親者(親子兄弟)の家族歴を有する方は、発症リスクが約1.7倍高いです。※7
膀胱がんの進行速度は?

膀胱がんの進行速度は、ステージ(病期)やタイプにより異なります。
一般的に、膀胱の粘膜下層に留まっている非浸潤膀胱がんは、比較的進行速度が遅い傾向にあります。
浸潤膀胱がんの場合、すでに膀胱の筋肉層に浸潤している状態であるため、進行速度は速いです。
上皮内膀胱がんは個人差が大きく、さまざまな要因により進行速度が異なりますが、約30%は進行が速いタイプに分類されます。※8
次章では、進行速度とステージや生活習慣・環境の関係を詳しく解説します。
ステージ(病期)が高くなると速くなる
膀胱がんは、ステージが高くなればなるほど進行速度が加速します。
ステージ0~1の初期段階であれば、10~15年ほどかけて1cmの大きさに成長するため、進行は穏やかといえます。
しかし、ステージ2から3へは1年半、ステージ3から4へは半年程度です。がんは加速度的に進行し、全身のあらゆる部位に広がって治療が困難になります。
膀胱がんを含むすべてのがん治療は、ステージが進むほど治療の選択肢が狭まり、身体的・精神的な負担も大きくなるため、早期発見・早期治療が重要です。
進行速度に影響を与える生活習慣・環境
下記は、膀胱がんの進行速度に影響を与えると考えられています。
- 喫煙
- 偏った食生活
- 運動不足
- ストレス
タバコに含まれる発がん性物質は、尿中で濃縮されてがん細胞の増殖を促して進行を早める恐れがあります。
また、肉・魚などを多く摂り、野菜・果物が不足した食生活は、がん細胞が好む酸性環境を助長して進行速度に悪影響を与えます。
そのほか、ストレスや運動不足による低体温は免疫機能を低下させて、がん細胞の進行を加速させるケースが少なくありません。
膀胱がんの進行速度別の治療法

膀胱がんの進行速度は、ステージ(病期)と深く関係しています。ステージは、次のTNM分類を組み合わせて決定します。
T:深達度
N:リンパ節への転移の有無や程度
M:遠隔の臓器やリンパ節への転移の有無
膀胱がんは、膀胱の内側の粘膜から発生し、粘膜上皮、上皮下結合組織、筋層へ広がります。深達度とは、がんがどの深さまで広がっているかを示す指標です。
がんが上皮下結合組織で留まっている場合、Ta・Tis・T1の非浸潤性膀胱がん、筋層まで及んでいる状態はT2~T4の浸潤性膀胱がんに分類されます。
そして、骨盤内のリンパ節への転移の有無や範囲(N)、骨盤外のリンパ節やほかの臓器への遠隔転移の有無(M)もステージの評価に重要な項目です。
次章では、ステージ別の治療法を詳しく解説します。
ステージ0~1
ステージ0~1の非浸潤性膀胱がんは、がんの数・大きさ、深達度、異型度、上皮内がんの併発の有無により、低リスク群・中リスク群・高リスク群・超高リスク群に分類されます。
低リスク群の治療は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)と膀胱内注入療法です。
尿道から内視鏡を挿入して膀胱内のがんを電気メスで切除し、膀胱内に細胞障害性抗がん薬を注入します。
中リスク群も同様に経尿道的膀胱腫瘍切除術をおこないますが、がんが取り切れないために2回実施するケースも少なくありません。
また、再発を抑制する目的で細胞障害性抗がん薬を複数回注入し、再発リスクが高い場合にはBCG膀注療法をおこないます。
高・超高リスク群においては、経尿道的膀胱腫瘍切除術やBCG膀注療法に加えて、膀胱全摘除術を検討します。
ステージ2~3
ステージ2~3の転移がない浸潤性膀胱がんは、膀胱全摘除術が標準治療です。
膀胱全摘除術では、膀胱のみならず、男性は前立腺や精嚢、女性は子宮や卵巣、腟の一部も同時に摘出する場合があります。
また、膀胱全摘除術を実施したあとは、尿を体外に排出するための尿路変向術が必要です。
高齢者や膀胱の温存を希望している方に対しては、膀胱全摘除術はおこなわず、経尿道的膀胱腫瘍切除術や薬物療法、放射線治療などによる集学的治療を実施します。
ステージ4
膀胱がんのステージ4とは、周辺の組織やリンパ節、遠隔の臓器に転移している状態です。
一般的に、手術は実施せず細胞障害性抗がん薬や免疫チェックポイント阻害薬などによる薬物療法を検討します。
また、骨への転移がある場合は、放射線治療を用いて症状を和らげ、生活の質の維持を目指します。
膀胱がんは早期発見が重要な理由

膀胱がんは、早期発見すれば内視鏡による体の負担が少ない治療が受けられるほか、膀胱や排出機能の温存も可能です。
一方、進行した場合、膀胱そのものや周辺の組織を摘出する必要があり、日常生活に大きな影響を与えます。また、全身のあらゆる臓器に転移して生存率が著しく低下します。
次章では、膀胱がんのステージ別5年生存率と、検査・診断方法を紹介します。
ステージ別の5年生存率
膀胱がんのステージ別5年生存率は、下記のとおりです。
ステージ1 | ステージ2 | ステージ3 | ステージ4 | |
---|---|---|---|---|
5年生存率 | 70.8% | 47.1% | 34.2% | 16.7% |
ステージ1の5年生存率は70.8%と、全がんの84.7%より低い数値です。しかし、がんが局所的に限られている場合は、5年生存率は87.3%まで上がります。※9※10
膀胱がんは再発のリスクが高く、また、何度も再発を繰り返すケースも少なくありません。そのため、ステージ2・3の5年生存率も、ほかのがんより低い数値です。※11
ステージ4まで進行すると治療が可能な範囲を超えてしまい、5年生存率は16.7%まで低下します。
膀胱がんの検査・診断方法
膀胱がんの検査・診断方法には、下記があります。
- 尿検査
- 超音波検査(腹部エコー)
- 膀胱鏡検査
- 画像検査
- 膀胱粘膜生検
尿検査では、がん細胞の有無を調べる尿細胞診と、尿に血液が混じっていないかを確認する尿潜血検査をおこないます。
超音波検査は、腹部に超音波プローブをあてて膀胱の形や状態を映像化する検査です。がんの有無・大きさなどの発見に役立ちます。
尿検査や超音波検査で異常が見られた際は、内視鏡を尿道から膀胱に挿入して出血の原因や疑わしい病変を詳しく観察する膀胱鏡検査を実施します。
また、がんの大きさ・広がり、ほかの臓器への転移状況の把握には、CT・MRIなどの画像検査が有用です。
膀胱がんの確定診断には、膀胱粘膜生検が必要です。全身あるいは下半身に麻酔をかけて、膀胱鏡で病変部を切除して病理検査をおこないます。
マイクロCTC検査で全身のがんリスクを判定可能

マイクロCTC検査は、膀胱がんを含む全身のがんリスクがわかる血液検査です。
血中のがん細胞を直接キャッチして個数を明示するため、従来の検査に比べて非常に早くがんの発見につながります。
ここからは、マイクロCTC検査の仕組みと魅力を紹介します。
マイクロCTC検査の仕組み
マイクロCTC検査は、がん細胞が増殖の過程で血中に漏れ出す性質に着目した画期的な検査です。
従来の検査は、X線や磁力・電波を用いて体の内部を画像化してがんの有無を調べるため、1cm未満のがんの早期発見は困難といわれています。
マイクロCTC検査の場合、米国「MDアンダーソンがんセンター」が開発した抗体を用いた独自の検査手法を導入しており、がんのサイズ・場所にかかわらず早期発見につなげます。
また、悪性度の高いがん細胞のみを捉える点もマイクロCTC検査の特徴の一つです。
マイクロCTC検査は、浸潤・転移する能力を獲得した悪性度の高い間葉系のがん細胞のみを特異度94.45でキャッチし、個数を1個単位で明示します。※12
検査は1回5分の採血のみで負担が少ない
マイクロCTC検査は、1回の採血のみで全身のがんリスクを判定します。検査に伴う痛み・違和感はもちろん、食事制限や検査薬の投与も一切ありません。
そのため、下記の方におすすめです。
- 仕事や家事の合間に検査を受けたい方
- 体に負担がかかる検査を避けたい方
- 気軽に自身のがんリスクを調べたい方
マイクロCTC検査は完全予約制を導入しており、受付を含めても30分程度で終了です。忙しい方でも非常に受けやすい検査といえるでしょう。
また、5~10ml程度の採血のみで全身のがんリスクを調べられることから、従来の全身がん検査に比べて身体的・精神的な負担を軽減できます。
そして、マイクロCTC検査は予約から結果確認まですべてWebで完結します。医療機関の受付時間を気にしたり、結果説明を聞きに来院したりなどの手間がかかりません。
全国のクリニックで検査が可能
マイクロCTC検査は、全国の提携クリニックで導入しています。居住地・勤務地の近隣や、外出先・出張先などの都合のよい場所のクリニックで検査が受けられます。
マイクロCTC検査の流れは、次のとおりです。
- クリニック検索・予約
- 検査(採血)
- 検査結果の確認
まず、マイクロCTC検査の公式サイトから受診するクリニックと日時を選び、問診票を記入後、支払い方法を選択して予約を確定させましょう。
検査当日は10分ほど前に来院し、受付を済ませたら医療機関の指示に従って検査(採血)を受けます。
検査結果は1週間~10日程度で確定します。登録先のメールアドレスに通知が届いたらマイページにログインして、結果を確認しましょう。
がん細胞が検出された方は、医師による無料相談が受けられます。
- 相談方法:対面(遠方の方はオンライン面談が可能)
- 予約方法:電話(代々木ウィルクリニック:03-5990-6182)
- 受付時間:9~12時・13~18時の間で最大30分
- 主な内容:検査結果の説明、精密検査・専門医・医療機関などの紹介
万が一のときも、一人で抱え込まず医師に相談できるため安心です。
膀胱がんの進行速度に関するよくある質問

最後に、膀胱がんの進行速度に関するよくある質問を紹介します。
同じ疑問を抱いている方は、ぜひ参考にしてください。
進行速度は予後に影響する?
膀胱がんの進行速度は、予後に大きく影響します。進行が速いほどステージは高くなり、治療の難易度が上がり、生存率が低下します。
膀胱がんの早期発見のためにも、気になる症状があるときは速やかに泌尿器科を受診しましょう。
ステージ4は手遅れ?
膀胱がんのステージ4は、必ずしも手遅れではありません。手術が困難な場合でも、薬物療法や抗がん剤治療でがん細胞を攻撃し、進行を遅らせることが可能です。
また、必要に応じて症状の緩和や生活の質の維持に向けたサポートも受けられます。
治療しないとどうなる?
膀胱がんを放置していると、膀胱や周辺組織の全摘出が必要となります。
また、がんは膀胱の外に広がって肺・肝臓・骨・脳などに転移し、強い痛みや呼吸困難などが生じて、最終的に死に至る可能性が高くなります。
臓器の温存はもちろん、がんによる死亡を防ぐためにも早期発見・早期治療が重要です。
まとめ

本記事では、膀胱がんの概要から進行速度、ステージ別の治療法まで解説しました。
膀胱がんは、ステージが高くなるにつれて進行速度が上がり、治療の選択肢が狭まります。
とくに、がんが筋層まで及ぶ浸潤性膀胱がんは、加速度的に進行が速くなり、臓器の温存が難しいケースが少なくありません。
血尿や排尿障害などの症状が現れた際は、放置せずに泌尿器科を受診しましょう。
また、喫煙や生活習慣は、膀胱がんの発症や進行に影響を与えるため、禁煙やバランスのよい食生活、適度な運動、ストレス管理などを心がけることも大切です。
膀胱がんをはじめ、全身のがんのリスクを把握したい方にはマイクロCTC検査がおすすめです。
マイクロCTC検査は、1回5分の採血のみで悪性度の高いがん細胞のみを捕捉します。気軽かつ体の負担がないことから、定期的に活用でき、がんの早期発見につながります。
〈参考サイト〉
※1、※4、※10:国立がん研究センター|がん統計 膀胱
※2:国立がん研究センター がん情報サービス|膀胱がんについて
※3:ファイザー|がんを学ぶ 尿路上皮がんの基礎知識
※5:厚生労働省|膀胱がんに関する基礎的知見
※6:国立がん研究センター がん対策研究所|喫煙、コーヒー、緑茶、カフェイン摂取と膀胱がん発生率との関係について
※7:日本癌治療学会|膀胱がん がん診療ガイドライン
※8:ユビー病気のQ&A|膀胱癌の進行速度はどのくらいですか?
※9、※11:公益財団法人 がん研究振興財団|がん統計’15
※12:マイクロCTC検査 | 血中のがん細胞を捕捉するがんリスク検査