がん検診は重要な検査ですが、一つ一つのがんに対して検査が必要となるため、時間がかかるデメリットがあります。
しかし現在は、血液検査のみで13種類のがんを検出できるがん検診があります。
早期診断に有用で、精度も高いと期待されている検査です。
本記事では、血液検査を用いた最新のがん検診について、解説します。
\ 注目のがんリスク検査マイクロCTC検査 /
血液1滴で検出できるがん検診とは
2019年11月、東芝と東京医科大学および国立研究開発法人国立がん研究センター研究所の共同研究により、血液1滴で精度の高いがん検診が受けられる技術を開発したと発表しました。
開発された技術はマイクロRNA解析により13種類のがんにそれぞれ特異的なマイクロRNAのパターンと照合し、がん診断をおこなうものです。
本章では最新のマイクロRNAによるがん検査の特徴を解説します。
13種類のがん
血液で検出できるがん検診は、マイクロRNAを解析しておこないます。
疾患にともないマイクロRNAの種類や量が変動する性質を利用した検査です。
国立がん研究センターは、大量の血液サンプルから抽出したマイクロRNAの解析により、がん患者に特異的なマイクロRNAを明らかにしました。
結果のデータを用いて、13種類のがんに特異的なマイクロRNAのデータベースが構築されています。
13種類のがんとは、胃がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、胆道がん、膵臓がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、乳がん、肉腫、神経膠腫です。
患者の解析データとデータベースを比較し、上記の13種類のがんを診断できます。
マイクロRNAを使用する検出方法
マイクロRNAとは、体内で遺伝子やタンパク質を調節するはたらきを担い、塩基の長さが22連鎖程度のRNAで、約2,500種類存在します。
本来マイクロRNAは細胞外へ分泌されたり、他の細胞に取り込まれたりして細胞間の伝令にかかわる役割を持ちます。
がん検診で利用しているのは、腫瘍化した細胞やその周囲の細胞が、腫瘍サイズの小さい早期より通常と異なるパターンでマイクロRNAを自律的に分泌する性質です。
さらに抗がん剤の感受性や転移、がんの消失など、病態の変化にも対応して変動します。
早期からマイクロRNAの値に変化が現れ、がんの病態を反映するため、新しい診断マーカーとして期待されています。
検査費用と検査にかかる時間
がん検診のためのマイクロRNA検査の費用は、開発者によると2万円程度と見積もられています。
すでにがん検査に用いられているマイクロRNA検査として、マイクロアレイがあります。
マイクロアレイは、数種類の消化器がんを検出できる検査が一般的で、検査価格が約10万円です。
また、マイクロRNA検査では、検査にかかる時間は2時間以内と発表されています。
検査精度は99%
開発者は、マイクロRNAを用いた検査により、99%の精度で13種類のがんを検出できると発表しています。
初期段階のステージ0のがんも発見できる可能性
マイクロRNAによるがん検査で検出に成功したなかには、生存率の高いステージ0の段階のがんも含まれています。
したがって、検査により初期段階のステージ0のがんも発見できる可能性があります。
がんの早期発見・早期治療の重要性
がんで亡くなる方は医学が進歩した現在もなお多いままです。
しかし、治療は進化しており、低侵襲の治療や治癒率の高い新薬も出ています。
進化の恩恵にあずかるためには、早期発見し、早期治療につなげることが重要です。
本章では、がんの早期診断の重要性を解説します。
日本の最も多い死因第1位は「がん」
厚生労働省の人口動態統計によると、死因の第1位はがんです。
割合として26.5%と1/4以上を占め、40~89歳の死亡原因の一位になりました。
働き盛りから家庭を支える年齢の主要な死亡原因となり、社会的にもがんによる死亡を減らすことは重要な課題です。
がんの部位で比較すると、男性は肺がん、大腸がん、胃がん、すい臓がん、肝臓がんの順に多く、女性は大腸がん、肺がん、すい臓がん、乳がん、胃がんの順に多い結果でした。
大腸がんの5年相対生存率
いろいろな種類のがんがどの程度治療に反応するのかを図る指標の一つが生存率です。
5年生存率とは、がんと診断されてから5年経過した時点で生存している割合のことです。
相対生存率とは、がんと診断された方の中で5年後に生存している方の割合が、日本人全体で5年後に生存している方の割合に比べ、どの程度低いかで表します。
大腸がん | 胃がん | 乳がん | |
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2010年から2012年に診断された方の 5年相対生存率 | 72.6% | 75.4% | 93.6% |
大腸がんと2010年から2012年に診断された方の5年相対生存率は72.6%です。胃がんと2010年から2012年に診断された方の5年相対生存率は75.4%です。
乳がんと2010年から2012年に診断された方の5年相対生存率は93.6%です。比較的短期的な予後のよいがんとして知られています。
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よくある質問
血液検査でおこなうがん検診について、よくある質問について回答します。
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腫瘍マーカーとはどう違いますか?
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腫瘍マーカーは、がん細胞やがん細胞に反応した細胞が作り出す特殊なタンパク質で、がんの種類によりさまざまな種類のマーカーがあります。
ただし、診断感度や診断特異度は低く、早期診断に有用性は高くありません。
マイクロRNAは、腫瘍細胞そのものや腫瘍周辺の細胞から通常の細胞と異なるパターンで分泌される性質を持つため、腫瘍の診断として利用します。
マイクロRNAの特徴は、腫瘍が小さい時期から自律的に分泌されているため血中濃度が変化しやすく、血液検査にも鋭敏に反映する点です。
そのため、腫瘍マーカーよりがんの早期診断に適していると期待されています。
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血液を用いたがんリスク検査で陽性の判定を受けた場合はどうしたらいいですか?
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血液を用いたがん検査で陽性の判定を受けた場合、がんの確定診断をするための画像検査や、がんそのものを顕微鏡で見る検査が必要です。
陽性となった検査結果を持参して、病院を受診し、精密検査を受けてください。
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通常のがん検診を受ける必要はありますか?
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血液を用いたがん検査では13種類と多様ながんに対応した検査ですが、子宮頸がんは網羅していません。
また、通常のがん検診では腫瘍そのものの性質や形態、細胞の検査をおこないます。
血液を用いた検査と別の角度からの検査のため、通常のがん検診も受けるほうがおすすめです。
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【今すぐがんリスクを知りたい方必見】マイクロCTC検査
マイクロRNAを利用した検査方法は血液1滴から乳がん・胃がん・肝臓がんなど13種類のがんを99%の精度で検出できるといわれていますが、実用化には至っていません。
そのため現段階でがんのリスクが気になるのであれば、通常はがんの検査を組みあわせて受ける必要があります。
しかしがん検査のひとつである「マイクロCTC検査」を利用すれば、一度の採血で全身のがんリスクをまとめてチェック可能です。
今すぐに全身のがんリスクが知りたい方には、非常に最適な検査といえるでしょう。ここでは、マイクロCTC検査について解説します。
1回5分の採血で全身のがんリスクがわかる
従来のがんリスク診断は尿検査・腫瘍マーカーなどの間接的な指標をもとに判定がおこなわれていたため、信頼性を疑問視する声も挙がっていました。
しかしマイクロCTC検査では、血中を流れる悪性度の高いがん細胞を直接捉えて個数を明示したうえでがんのリスク判定がおこなわれます。
そのため、従来のがんリスク診断よりも高精度な結果が期待できます。
さらに検査にかかる時間は1回5分であるため、多忙な日々を送る方でも受けやすいでしょう。
早期発見・治療につながる
マイクロCTC検査でのがん細胞の検出には、正確度を示す特異度が94.45%のCSV抗体が使用されています。
そのため、偽陽性・偽陰性率が出る可能性は極めて低いです。
陽性判定が出た場合には身体のどこかに悪性度の高いがん細胞があると判断できるため、通常の検査であれば見つかりにくいがんの早期発見・早期治療にもつながります。
日本国内に検査センターを完備
セルクラウドが提供するマイクロCTC検査では、検体採取後すぐに検査に移れるよう日本国内に検査センターを設置しています。
国内でCTC検査を実施しているがん専門クリニックでは、海外に検査を依頼しているところも多いです。
しかし血液の検体は、採取してから時間が経ってしまうと分析の精度が落ちるといわれています。
できる限り精度の高い全身のがんリスク検査を受けたい方は、セルクラウドのマイクロCTC検査が受けられる医療機関を選び、ぜひ受診してみてください。
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まとめ
血液を用いた精度の高い最新の検査について解説しました。
がんの早期診断に役立つ、マイクロRNAを利用した血液検査を理解し、健康増進に役立てましょう。
<参考文献>
たった1滴の血液で13種のがんを早期発見 | Highlighting Japan
血液1滴からがんの早期発見を期待。「マイクロRNA」の解析で、13種類のがんを99%の精度で選別 | 再発転移がん治療情報
血中マイクロRNAによって13種のがんを高精度に区別できることを実証|国立がん研究センター
マイクロアレイ血液検査 |東京月島クリニック
腫瘍マーカー・PETがん検診、マイクロRNA血液検査|麻布医院
東芝、血液1滴でがん13種を精度99%・2時間以内に検出|Beyond Health
研究開発ライブラリ 血液1滴から13種類のがんを99%の精度で検出する技術を開発−独自のマイクロRNA検出技術を使った健康診断などの血液検査により、生存率の高いステージ0からがん罹患の有無を識別− |東芝
死因順位別にみた年齢階級・性別死亡数・死亡率|厚生労働省
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