人間ドッグとがん検診の違いとは?検査内容・発見できる病気・費用について解説

人間ドッグとがん検診、どちらを受けようか迷っている方や、自身にはどちらの検査が必要かわからない方は少なくありません。

体の健康状態を総合的に調べる人間ドッグに対し、がん検診は特定のがんの早期発見に特化した検査です。検査項目をはじめ、目的や発見できる病気も異なります。

本記事では、人間ドッグやがん検診の違いをはじめ、目的やメリット・デメリット、検査にかかる費用などを詳しく解説します

がんを含む病気には自覚症状がないケースもあるため、定期的に体の状態を調べることが大切です。健康な方もぜひ参考にしてみてください。

人間ドッグとがん検診の違い

はじめに、人間ドッグとがん検診の違いを解説します。

どちらを受けるべきか迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

検査を受ける目的

人間ドッグは、全身の総合的な検査です。がんのみならず、幅広い疾患の発見を目的としています。

また、自身の家族歴や体の状態にあわせて、オプション検査が追加できる点も、人間ドッグの特徴です。

がん検診の目的は、がんを早期に発見し、がんによる死亡を防ぐことです。がん検診には、市区町村や職場が提供する対策型検診と、個人で受診する任意型検診があります。

対策型検診の場合は、厚生労働省の指針により、がんの予防対策として実施されるため補助制度が利用可能です。しかし、対象年齢やがん検診の種類・受診間隔が定められています。

任意型検診は、医療機関が提供するサービスを個人で受けることから、全額自己負担ですが、対策型検診の対象者以外も目的・状況にあわせて受診ができることがメリットです。

発見できる病気

人間ドッグとがん検診は、発見できる病気が異なります。

下記は、人間ドッグで発見可能な疾患です。

  • がん:肺、胃、食道、大腸、肝臓、すい臓、乳房、子宮、卵巣、前立腺
  • 心疾患:狭心症、心筋梗塞、心臓弁膜症
  • 脳疾患:脳梗塞、脳腫瘍、脳動脈瘤
  • 生活習慣病:高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症
  • 感染症:B型・C型肝炎、梅毒、ピロリ菌
  • そのほか:甲状腺機能異常症、骨粗鬆症、貧血、脂肪肝、胆石、腎機能障害、前立腺肥大、認知症、更年期障害、病的な老化など

人間ドッグは、がんや生活習慣病はもちろん、心臓疾患や脳血管疾患などの、健康診断では見つけにくい病気や、将来的になりうる可能性が高い病気などの早期発見に役立ちます

一方、がん検診は、がん以外の病気の発見はできません。自身の健康状態を把握するためには、がん検診とあわせて健康診断を受診しましょう。

検査にかかる費用

人間ドッグとがん検診(対策型検診)の費用は、下記のとおりです。

検査内容費用
人間ドッグ総合検診+PET/CT234,800~267,800円
がん検診(対策型検診)胃がん検査(X線)1,000~2,000円
大腸がん検査500~1,000円
肺がん検査300~1,000円
乳がん検査1,000~2,000円
子宮頸がん検査1,000~2,000円
参考:国立がん研究センター 中央病院|検診費用

人間ドッグは、市区町村や加入している社会保険が、費用の一部を負担しているケースもありますが、基本的に完全自己負担です。

対策型のがん検診は、国および自治体の公的資金の費用を利用して実施するため、比較的安く受診できます。

人間ドッグやがん検診のメリット・デメリット

次章では、人間ドッグやがん検診のメリット・デメリットを紹介します。

メリット・デメリットを正しく理解したうえで、各検診を受診しましょう

がんを早期発見できる

人間ドッグやがん検診の最大のメリットは、がんの早期発見です。

がんは、初期の自覚症状が乏しく、体の異変を感じたときには治療が困難なケースが少なくありません

下記は、胃がんの病期ごとの実測生存率です。


病期
実測生存率実測生存率実測生存率実測生存率実測生存率
1年2年3年4年5年
Ⅰ期96.0%92.4%88.9%85.4%82.0%
Ⅱ期86.9%77.1%70.2%64.7%60.2%
Ⅲ期78.8%60.1%48.6%41.8%37.4%
Ⅳ期38.2%17.9%10.3%7.3%5.8%
参考:国立がん研究センター|院内がん登録生存率集計結果閲覧システム 

がんは、ある一定以上の大きさまで成長すると、増殖スピードが加速し、血液やリンパを通じてほかの臓器へ転移するため、進行すればするほど生存率が低くなります。

そのため、がんによる死亡を防ぐためには、早期発見が非常に重要です。

また、がんの早期発見は、がんの根治のみならず、治療の選択肢が広がり、身体的・経済的な負担にもつながります。

間違った結果が出る場合がある

人間ドッグやがん検診の検査結果は、100%正しくはなく、間違った結果が出る場合もあります。

間違った結果により、不必要な検査や治療を招いたり、不安・不眠などの精神症状を引き起こしたりと、心と体に大きな負担が生じる点が、デメリットです。

また、検査を受けることで、稀に「偶発症」といわれる事故が引き起こされる可能性があります。

たとえば、内視鏡検査を受けた際、胃の場合で10,000人に一人、大腸では1,500人に一人の割合で、出血や穿孔が報告されています。1

精密検診時の偶発症数の割合は、下記のとおりです。

検診実施数偶発症数偶発症割合
胃がん1,302,606534.07%
大腸がん2,101,9551687.99%
肺がん733,073699.41%
乳がん1,006,427393.88%
子宮頸がん313,382154.79%
※2011~2015年度合計
(参考:厚生労働統計協会|日本の対策型検診における直近5年度分の偶発症頻度について

メリットとデメリットを理解したうえで、人間ドッグ、またはがん検診を受けましょう。

人間ドッグとがん検診の両方を受けたほうがよい?

人間ドッグとがん検診の両方を受けるべきなのかを解説します。

どちらを受診すべきか、両方受けるべきか迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

短期間で何度も受ける必要はない

人間ドッグは2~3年に1回、がん検診は1~2年に1回の受診が推奨されており、短期間で何度も受ける必要はありません。

検査による合併症や薬剤などの副作用を考えた場合、ある程度期間を設けた方がよいでしょう。

人間ドッグのコースには、がん検診の検査項目が含まれており、制度の高い検査を受けられる場合が多いです。

しかし、がん検診のみを受診する場合は、必ず定期健康診断も受けることが大切です。

状況に応じて自治体のがん検診を利用する

自治体のがん検診は、がんの死亡率減少が証明された、科学的根拠に基づく検査内容で実施しています。対象者に該当する方は、自治体のがん検診を利用しましょう。

下記は、自治体のがん検診の検査項目・対象者・受診間隔です。

種類検査項目対象者受診間隔
胃がん検診胃部X線検査40歳以上年1回
大腸がん検診便潜血検査40歳以上年1回
肺がん検診胸部X線検査、喀痰細胞診40歳以上年1回
乳がん検診視診・触診、マンモグラフィ検査40歳以上2年に1回
子宮頸がん検査視診、子宮頚部の細胞診および内診20歳以上2年に1回

自治体のがん検診は、補助金制度により、検査費用の自己負担額が少なく、1,000~2,000円程度で受診できます。

対象外の方やより詳しい検査を受けたい方、家族歴・既往歴を考慮し、がん以外の疾患の検査を受けたい方は、人間ドッグや任意型がん検診を検討しましょう

マイクロCTC検査は採血のみでがんリスクを判定

マイクロCTC検査は、採血のみでがんリスクを判定する、先進的な検査です。

がん細胞が、増殖の過程で血中に漏れ出す性質に着目し、悪性度の高いがん細胞のみを直接捉えて、個数までも明示します

ここからは、マイクロCTC検査の魅力を詳しく解説します。

従来のがん検診の課題を解決

従来のがん検診では、がんが1cm以上に成長しない限り、発見が難しいといわれています。

マイクロCTC検査の場合、がん細胞が増殖をはじめ、血中に漏れ出した段階で検出するため、1cm未満のがんの発見に効果的です。

また、従来のがん検診には下記の課題があります。

所要時間検査における課題
PET検査3時間程度・5~6時間の絶食が必要
・膀胱、腎臓、肝臓、胃などは発見しにくい
・医療被ばくが多く、検査後1~2時間は子どもや妊婦との接触が禁止
CT検査30分程度・造影剤による副作用が起こる場合がある
・頭部や硬い骨の下にあるがんが見つけにくい
・医療被ばくがある
MRI検査1時間程度・臓器自体が動く心臓や腸管の検査には不向き
・閉所恐怖症の方や、金属類が体内に入っている方は、検査が受けられない
X線検査15分程度・PET、CT、MRIに比べて検査精度が下がる
・造影剤による副作用が起こる場合がある
・医療被ばくがある

マイクロCTC検査は、1回5分の採血のみで全身のがんリスクを調べるため、従来のがん検診の課題を解決します。

そのほか、従来のがん検診では、がんが発生した場所・形により、見逃してしまうケースもありますが、マイクロCTC検査の場合、全身のがんリスクを調べられます

精度の高いスクリーニングが可能

マイクロCTC検査は、がん研究施設「米国MDアンダーソンがんセンター」が開発した、CSV抗体を導入しており、がん細胞の検出においての特異度は、94.45%です。2

そのため、非常に精度の高いがんのスクリーニングが可能といわれています。

腫瘍マーカーをはじめ、血液・尿・唾液などの従来のがんスクリーニング検査は、がんの有無ではなく、あくまでも「がんである可能性」を調べる検査です。

マイクロCTC検査は、血中に漏れ出したがん細胞そのものを直接捉え、個数までも明示するため、陽性判定の場合、体にがん細胞が潜んでいることが明確です。

マイクロCTC検査をおすすめできる方

マイクロCTC検査は、下記に該当する方におすすめです。

  • 短時間で高精度のがんリスク検査を受けたい方
  • 痛み・違和感・医療被ばくなど、体の負担がかからない検査を受けたい方
  • 検査前の食事制限や、検査後の副作用がない検査を受けたい方

そのほか、人間ドッグより低価格の検査を探している方や、自治体のがん検診の対象外の方は、マイクロCTC検査を検討しましょう。

人間ドッグやがん検診に関するよくある質問

最後に、人間ドッグやがん検診に関するよくある質問を紹介します。

同じ疑問を抱いている方は、ぜひ参考にしてみてください。

どちらを受けたほうがよい?

日本人の死因順位は、1位:がん、2位:心疾患、3位:老衰、4位:脳血管疾患です。3

人間ドックには、一般的な健康診断より幅広い検査項目があり、がんのみならず、死因の2位の心疾患、4位の脳血管疾患の早期発見に有効です。

そのため、心疾患の危険因子である高血圧症、糖尿病、脂質異常症の方や、遺伝性が認められている脳卒中や脳梗塞の家族歴がある方は、人間ドッグを受けた方がよいでしょう。

また、がん検診の受診対象にならない方にも人間ドッグはおすすめです。

病気のリスクが少ない方は、定期的にがん検診と人間ドッグを受診しましょう

がんの発見率は?

人間ドックと自治体のがん検診のがん発見率は、下記のとおりです。

がんの種類人間ドック(受診者に対するがん発見率)自治体のがん検診(要精密検査に対するがん発見率)
胃がん0.69%1.83%
大腸がん1.37%2.79%
肺がん0.42%1.93%
乳がん1.36%4.70%
子宮頸がん0.54%1.01%
参考:人間ドック健診施設実態調査委員会|平成29年度(2017年度)実態調査厚生労働省|令和2年度 地域保健・健康増進事業報告の概況

人間ドックは、20歳以上であれば誰でも受診可能です。一方、がん検診の受診対象者は「がんのリスクが高くなる年齢」であるため、がん発見率が高い傾向にあります

精密検査が必要と判定されたら?

精密検査とは、検査で見つかった異常をさらに詳しく調べるために行う検査のことです。

人間ドッグやがん検診の受診後に、精密検査が必要と判断された場合、体の異常の原因を探るために、さらに詳しい検査をおこないます。

精密検査の受診は、任意です。

しかし、「とくに症状はない」「忙しく、受診する時間がない」などの理由で、精密検査を受けずに放置をしておくと、がんをはじめとする病気の早期発見が困難になります

要精密検査と診断された場合は、必ず受診しましょう。

まとめ

人間ドッグは、がんをはじめ、心疾患や脳疾患、生活習慣病、感染症などの幅広い病気の発見に有効ですが、基本的に検査費用は全額自己負担です。

一方、自治体が実施している対策型がん検診は、少ない自己負担額で胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がんの5つのがん検診が受診できます。

しかし、対象年齢・受診間隔が決められているため、対象外でもがん検診を受けたい方は、医療機関が個人向けに提供する任意型がん検診を受診しましょう

また、自身のタイミングで、がんリスク検査を受けたい方には、マイクロCTC検査がおすすめです。

マイクロCTC検査は、1回5分の採血のみで全身のがんリスクを調べるため、仕事や家事で忙しく、人間ドックやがん検診を受診する時間がない方でも気軽に受けられます。

また、体の負担が少ないため、偶発症や副作用、医療被ばくが心配な方でも安心して受けられます。

将来も健康に過ごすためには、マイクロCTC検査を活用して、がんの早期発見・早期治療につなげましょう。

〈参考サイト〉
※1:とうきょう健康ステーション|がん検診の目的とその利益(メリット)・不利益(デメリット)
※2:マイクロCTC検査 | 血中のがん細胞を捕捉するがんリスク検査
※3:厚生労働省|令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況

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