肺がんの検査方法とは?早期発見できる検診や確定診断するために必要な検査を解説

肺がんは、日本人の罹患数が多く、死亡率が高いことが特徴です。

そのため、喫煙習慣や肺がんの家族歴がある場合、自身が肺がんになるのではないかと不安を抱く方が少なくありません。

肺がんは早期に発見すれば治療が可能です。

本記事では、肺がんの概要・種類をはじめ、肺がんの早期発見に役立つ検診や、確定診断につながる精密検査の内容などを詳しく解説します

肺がんの検査に関する知識を深めて、早期発見・早期治療を目指しましょう。

肺がんとは?

肺がんとは、肺の気管・気管支、肺胞の細胞などに発症するがんです。

肺がんは、部位別がんの罹患数2位で、2019年に肺がんと診断された方は、男女あわせて12万人を超えています。1

また、死亡者の多さも肺がんの特徴の一つです。肺がんは、がんによる死亡数のトップで、2020年には75,585人が亡くなっています。2

ここからは、肺がんの主な自覚症状をはじめ、種類やステージ別の5年生存率を紹介します。肺がんに関する知識を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

肺がんの主な自覚症状

肺がんの主な自覚症状は、咳、痰・血痰、胸の痛み、動悸・息切れ、発熱などです。

しかし、初期は自覚症状がない場合が多く、がんが大きくなりリンパ筋や組織に広がりはじめてから、しつこい咳、痰や血痰、喘鳴などの症状が現れます

また、がんが肺のスペースを圧迫するため、息切れを起こしやすくなり、咳や深呼吸をした際に、胸・背中・肩に痛みが生じるケースも少なくありません。

そのほか、肺がんが進行し、肺の近くや胸部の組織・リンパ筋・臓器に転移した場合、発熱や顔・首の腫れ、声のかすれが起こります。

肺がんの自覚症状は、風邪や気管支炎、喘息、肺炎などほかの病気と似ているため、定期的な検診が非常に重要です。

肺がんの種類

肺がんは、大きく分けて4種類に分類され、進行のスピードや転移のしやすさなど、タイプにより異なります。

  • 腺がん

腺がんは、肺がん全体の50~60%を占めており、肺がんのなかで最も多いがん種です。気管支に発生し、丸い形の細胞が増殖します。3

手術をすれば、高い確率で治癒が可能ですが、小さいがんでも転移しやすいといわれています。

  • 扁平上皮がん

扁平上皮がんは、腺がんに続いて多く、全体の25~30%を占めています。比較的、咳・血痰などの症状が現れやすいといわれており、主な発症原因は喫煙です。4

腺がんと比べて、がん細胞の増殖スピードが速く、抗がん剤が効きにくいことが特徴です。

  • 大細胞がん

大細胞がんは、腺がんや扁平上皮がんの性質・特徴が認められない悪性腫瘍を指し、発生頻度は肺がん全体の5%程度です。5

薬物療法、放射線療法の効果が出にくく、増殖が速いといわれています。

  • 小細胞がん

小細胞がんは、進行スピードが速く、ほかの臓器にも転移しやすい、悪性度が高いタイプのがんです。

発見時には手術ができないケースが多く、薬物療法や放射線療法が効きやすいため、一般的に化学放射線療法をおこないます。

ステージ別の5年生存率

肺がん全体の5年生存率は、34.9%(男性:29.5%、女性:46.8%)です6

部分別がんのなかでは、膵臓、胆のう(胆管を含む)に続く、ワースト3位の5年生存率です。7

ステージ別の実測生存率を紹介します。

ステージ実測生存率
1年2年3年4年5年
Ⅰ期95.2%89.1%83.4%78.6%74.3%
Ⅱ期84.9%70.1%60.1%52.5%47.0%
Ⅲ期70.1%49.2%37.9%31.4%27.2%
Ⅳ期40%22.2%14.4%10.3%8.0%
※2015年5月生存率
(参考:がん情報サービス|院内がん登録生存率集計結果閲覧システム 肺がん

ステージⅠ期の5年生存率は74.3%ですが、ステージⅡ期に進行した場合、47.0%と約半分の生存率になります。そして、ステージⅣ期になると、10%にも満たない値です。

肺がんは、特有の自覚症状がないため、気が付かないうちにほかの臓器にがんが広がったり、リンパ筋に転移したりと、手術が不可能な状態にまで進行します

手術の適応になる症例が少ないことが、生存率の低さに影響していると考えられます。

肺がんを早期発見する検査方法

ここで、肺がんを早期発見する検査方法を紹介します。

健康診断や肺がん検診では、多くの場合、下記の検査をおこない、がんの早期発見につなげています。

  • 胸部X線検査
  • 喀痰細胞診

次章で詳しく解説します。

胸部X線検査

胸部X線検査は、厚生労働省が指定する健康診断の必須項目として、企業・事業者に対し検査を義務づけています。

肺胞付近にある肺の表面に近い場所のがんの有無を調べる、いわゆるレントゲン検査です。検査前の食事制限や、検査薬の服用はありません。

息を大きく吸って肺を膨らませて、肺全体の断面図を撮影し、詳しく調べます。本来、X線により肺は黒く写りますが、病変がある部位は白っぽく写ります。

胸部X線検査にて異常ありの判定を受けた場合、精密検査の受診が必要です。

喀痰細胞診

喀痰細胞診は、痰のなかに剥がれ落ちたがん細胞を検出するスクリーニング検査です。

検査方法は、3日間、自宅で起床時や早朝の痰を提出するのみです。しかし、肺がんを発症しても、痰のなかにがん細胞が発見されないケースもあります。

50歳以上で、禁煙指数(1日に吸うたばこの本数×喫煙年数)が600以上の、いわゆる「ハイリスク群」に該当する方は、胸部X線検査と喀痰細胞診を併用します。

検査結果により、二次検査の指示を受けた際は、必ず精密検査を受診しましょう。

肺がんの疑いや確定診断するための検査方法

肺がんの疑いや確定診断するための検査方法は、下記のとおりです。

  • 胸部CT検査
  • 気管支鏡検査
  • 経皮的針生検
  • 胸腔鏡検査
  • MRI検査
  • PET検査

次章では、それぞれの検査内容を詳しく解説します。健康診断や肺がん検診などで異常を指摘された方は、ぜひ参考にしてみてください。

胸部CT検査

胸部CT検査は、一般的な精密検査の一つです。X線を使用し、肺を1~5mm幅で切り取った数百枚の断面図を撮影し、肺の状態を詳しく確認します。

小さいがんや、心臓や血管、横隔膜などの陰に隠れた部位に発症したがんの発見が可能です。また、肺がん以外にも、肺結核、肺気腫、気胸、肺炎などの発見にもつながります。

より詳細な情報を得るために、造影剤を投与する場合があり、検査自体の所要時間は30分程度です。

妊娠中の方や、ペースメーカーをはじめとする精密機器が体内にある方は、検査が受けられない場合があるため、事前に医療機関に確認しましょう。

そのほか、身体への影響が少ないレベルですが、医療被ばくは避けられません。

気管支鏡検査

気管支鏡検査は、胸部CT検査とともに代表的な精密検査です。口や鼻から3~6mmほどの肺の内視鏡(肺カメラ)を挿入し、細胞や組織を採取してがんの有無を確定します。

採取した細胞・組織は、生検を実施して確定診断につなげます。そのため、結果が出るまで数日~2週間程度の時間を要するでしょう。

内視鏡が気管・気管支を通る際、苦痛・息苦しさが生じるため、喉や気道の粘膜への局所麻酔や、眠った状態で検査をおこなう静脈麻酔を用いる場合があります。

外来ではなく、入院が必要な医療機関もあります。検査予約時に確認しましょう。

経皮的針生検

経皮的針生検は、超音波やX線、CTなどで確認しながら、身体の外から細い針を指し、病変が疑われる部位の細胞・組織を採取する検査です。

一般的に、身体の表面に近い場所に病変がある場合や、気管支鏡検査の肺カメラが届かない、肺の末端にある病変に対しておこないます

経皮的針生検は、気管支鏡検査に比べて、気胸や喀血(肺出血)などの合併症や、針の穴から入った空気が血管をつまらせる恐れもあるため、身体の状態に応じて検討します。

胸腔鏡検査

胸腔鏡検査は、胸部を小さく切開し、内視鏡を肋骨の間から、肺の組織が収まっている胸腔へ挿入し、組織を採取して詳しく調べる検査方法です。

局部麻酔、あるいは全身麻酔下でおこなうため、検査時の痛みはありません。麻酔がきれた際に痛みが生じた場合は、痛み止めが処方されます。

一般的に、数日から1週間程度の入院が必要です。

MRI検査

MRI検査は、磁気(ラジオ波)を身体にあて、さまざまな方向の断面を画像化する精密検査です。全身を一度に調べられることが大きなメリットです。

また、骨を通過する磁気の特性を利用しているため、骨に囲まれた部位の映像化も可能であり、リンパ筋や骨への転移の確認にも有効です。

検査は、専用のベッドに寝た状態でおこないます。痛みはありませんが、トンネル状の装置に入るため、閉所恐怖症の方は、検査が受けられない場合があります。

また、ペースメーカーやインプラントなど、体内に金属類が入っている場合も検査ができません。事前に医師に相談しましょう。

PET検査

PET検査は、がん細胞がブドウ糖を取り込む性質を利用した、高精度の精密検査です。体内にブドウ糖類似物を投与し、全身をスキャンして細胞の活動を撮影します。

一度にほぼ全身の撮影ができる点がメリットですが、糖尿病の方、がんに関係なくブドウ糖が集まりやすい胃・腸・脳などの臓器では、正確な結果が得られない場合があります

入院は不要ですが、検査の5~6時間前から糖分を含む飲食物の摂取はできません。

また、投与する薬剤は放射性フッ素を付加しているため、妊娠中・妊娠の可能性がある方は検査を受けられません。

検査後は、妊娠中の方、赤ちゃん・子どもと接触を控えることが大切です。

肺がんの治療薬を検討する際の検査方法

肺がんの治療薬を検討する際は、バイオメーカーと呼ばれる下記の検査方法が有効です。

  • 遺伝子検査
  • PD-L1検査

次章では、治療方針を立てるうえで重要な検査方法について、詳しく解説します。

遺伝子検査

遺伝子検査は、一人一人の遺伝子異常をターゲットにした治療をおこなうための検査方法です。

がん細胞の発生や増殖に直接関わる遺伝子の異常を調べたうえで、遺伝子の異常に応じた分子標的薬を用い、がん細胞の増殖を抑制します

化学療法や放射線療法と異なり、がん以外の正常な細胞への影響を抑えられることがメリットです。

しかし、一部の分子標的薬には、発熱や下痢、高血圧、皮膚や肝機能の障がいなどの副作用が報告されています。

PD-L1検査

 PD-L1検査は、PD-L1と呼ばれるがん細胞の表面に存在するタンパク質の存在を調べる検査で、治療薬を検討する際におこないます。

PD-L1には、免疫細胞の働きを抑制する役割があり、がん細胞に多くのPD-L1がみられる場合、免疫チェックポイント阻害薬(PD-1阻害薬、PD-L1阻害薬)が有効です。

免疫チェックポイント阻害薬は、免疫のブレーキを解除し、免疫本来の力でがん細胞を攻撃する、画期的な治療薬といわれています。

一方、免疫の働きがよいと、皮膚や消化管の異常や、間質性肺炎、大腸炎、甲状腺機能障がいなどの副作用が起こるケースもあります。

マイクロCTC検査は血液検査のみでリスクを判定

マイクロCTC検査は、血液検査のみで全身のがんリスクを判定する検査です。

時間的・身体的な負担が圧倒的に少ないため、がん検診を受診する時間がない方や、検査時の痛み・違和感などが苦手な方にも、非常におすすめです。

ここからは、マイクロCTC検査の仕組みをはじめ、所要時間、検査場所などを詳しく解説します。

マイクロCTC検査の仕組み

マイクロCTC検査は、血中に漏れ出したがん細胞を直接捉えて、全身のがんリスクを評価する、先進的な血液検査です。

がん細胞は、新生血管と呼ばれる独自の血管をつくり、酸素と栄養を吸収して増殖します。

マイクロCTC検査は、増殖の過程で新生血管から既存の血管へ漏れ出した、悪性度の高い間葉系がん細胞のみを特異度94.45%で捕捉し、個数までも明示が可能です。※8

MRI検査やPET検査などの精密検査は、がん細胞が1cm以上に成長しない限り、発見が難しいといわれています。

1cm程度のがん細胞の細胞数は、約10億個にも及びます。がん細胞は大きくなるほど、細胞数が増えて進行スピードが加速するため、早期発見・早期治療が重要です。

マイクロCTC検査の場合、1cm未満のがん細胞でも捉えられます。従来の画像診断より早い段階でがんリスクが明確になり、治療の選択肢も増えるでしょう。

検査はわずか1回5分の採血のみ

マイクロCTC検査は、1回5分の採血のみで全身のがんリスクが判明します。

下記は、ほぼ全身のがんを調べられるMRI検査、PET検査の比較表です。

MRI検査PET検査マイクロCTC検査
所要時間30分~1時間2~3時間5分
事前準備朝食を控える5~6時間前から絶食なし
検査後の注意点造影剤の排出を促すために水分を多めに摂取する医療被ばくの観点から、子どもや妊婦と接触を控えるなし

マイクロCTC検査は、1回5分程度で終了し、事前準備や検査後の行動制限がないため、仕事のスケジュール調整が難しい方や、家事・子育てで忙しい方におすすめです。

全国のクリニックで検査が可能

マイクロCTC検査は、がんリスクの検査方法として多くの医療機関に導入されており、全国のクリニックで検査が可能です。

住居地や勤務先に近いクリニックが選べ、検査のために遠方の医療機関を受診する手間が省けます

全国のクリニックで採取した血液検体は、国内の自社検査センターに送られ、経験豊富な検査技師が丁寧に分析・レポートします。

仮に、引っ越しや転勤などで受診するクリニックが変更になった場合でも、同様に高精度のがんリスク検査が受けられ、安心です。

マイクロCTC検査の予約は、公式サイトにて可能です。クリニックと採血・検査の希望日時を選択したあと、クリニックから連絡があり予約確定となります。

検査の結果は、公式サイトのマイページから確認できます。

肺がんの検査方法に関するよくある質問

最後に、肺がんの検査方法に関するよくある質問を紹介します。

同じような疑問を抱いている方は、ぜひ参考にしてみてください。

肺がん検診はいつ受診すべき?

肺がんは、年齢とともに罹患率が上がるため、国は40歳から1年に一度、肺がん検診の受診を推奨しています。

自治体や企業のがん検診では、科学的根拠が確立した検査として胸部X線検査がおこなわれます

50歳以上で喫煙している、あるいは過去に喫煙していた場合は、胸部X線検査とあわせて喀痰細胞診を受けましょう。

肺がん検診にて、がんの疑いありと判定された方は、自覚症状がない場合でも必ず精密検査を受けてください。

肺がんになりやすい方の特徴は?

肺がんになりやすい方の特徴は、下記のとおりです。

  • たばこを吸う、またはたばこの煙にさらされ、煙を吸う機会がある方
  • アルミニウムやヒ素、アスベストなどを吸引した方
  • 慢性閉塞性肺疾患、吸入性肺疾患、肺結核を患っている方
  • 肺がんの家族歴がある方

一つでも該当する場合は、定期的に肺がん検診を受診しましょう。

腫瘍マーカー検査とは?

腫瘍マーカー検査とは、血液や尿などの成分を測定し、がんの可能性を推測するスクリーニング検査です。

がんを診断するためではなく、がん治療の効果や再発・転移の確認をおこなうことを目的としています

肺がんを調べる際は、血液中のCEA、SLX、SCC、CYFRA、NSE、Pro-GRPなどを測定し、評価します。

肺がんのタイプやステージにより検出率が異なるうえに、肺がんであるにもかかわらず、いずれの数値も高くならない場合もあり、あくまでも補助的な検査といえるでしょう。

まとめ

肺がんは、全がんのなかで罹患数が2位であり、死亡数がトップです。初期の自覚症状が風邪や気管支炎などと似ているため、発見が遅れる傾向にあります。

また、肺がんのタイプによりがんが小さいうちから転移するものや、抗がん剤が効きにくいものがあり、治療は安易ではありません。

そのため、肺がんは早期発見が非常に重要といえます。40歳からは1年に一度、肺がん検診を受診しましょう

肺がんをはじめ、全身のがんリスクを早期に知りたい方には、マイクロCTC検査がおすすめです。

マイクロCTC検査は、血中に漏れ出したがん細胞そのものを直接捉えて、個数を明示するため納得感が得られるがんリスク検査です。

1回5分の採血のみで検査が完了します。自身のがんリスクを気軽に把握したい方は、マイクロCTC検査を活用しましょう。

〈参考サイト〉
※1、※6:国立がん研究センター|がん統計 肺
※2、※7:国立がん研究センター|最新がん統計
※3、※4、※5:国立がん研究センター 東病院 | 肺がんについて
※8:マイクロCTC検査 | 血中のがん細胞を捕捉するがんリスク検査

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