「乳がん検診はいつから受けられるの?」「自治体の検診より早く検診を始めた方がよい?」など、不安に思ったことがある方も多いでしょう。
乳がんは非常に罹患率が高いですが、早期に見つかれば生存率は決して低くありません。そのため、乳がん検診が非常に重要です。
本記事で乳がんについて知識を持ち、検診に定期的に通いましょう。
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乳がん検診は40歳から推奨
「乳がん検診はいつから受けるとよいの?」と疑問を抱いたことがあるでしょう。
厚生労働省は、症状のない方が受けた場合に、死亡率を下げる効果があり、不利益が少なくなる乳がん検診の開始年齢を検討してきました。
その結果、40歳以降、2年に一度乳がん検診を受けることを推奨しています。
「どのような方が乳がんになりやすい?」「私はがん検診を受けた方がよい?」などの疑問が浮かぶ方も多いでしょう。
ここでは乳がんを発症しやすい方について、解説します。
乳がんを発症しやすい年齢
2018年の全国がん登録データによると、女性の癌罹患数のうち乳癌は全部位の22.2%を占め、女性の癌の中では最も頻度が高い癌です。
年齢別に見ると、30代後半から罹患率が上昇し始め、45〜54歳の年齢階級の罹患率が著しく高くなります。
45〜50歳には罹患率が人口10万人当たり250人ほどとなり、45〜69歳の間がピークです。そのあと緩やかに減少する傾向になります。
乳がんを発症しやすい方
乳がんの直接的な要因は明確に解明されていません。しかし統計的に危険因子が分かってきています。
乳がんの危険因子
- 年齢(40歳以上)
- 未婚の方
- 高齢初産の方(出産していない方)
- 初潮が早く、閉経が遅い方
- 肥満の方(閉経後)
- 血縁者に乳がんになった方がいる
- 良性の乳腺疾患になったことがある
- 乳がんになったことがある
- 閉経後ホルモン補充療法や経口避妊薬使用の経験がある
乳がんができたり、大きくなったりしていく過程には、性ホルモンであるエストロゲンの作用が大きくかかわっています。
上記のリスク要因には、体内のエストロゲンレベルに影響を与えると考えられるものが多いです。
医療機関で乳がんを見つける主な検査方法
乳がんを見つけるために医療機関を受診すると、さまざまな検査を受けます。
それぞれの検査の方法を解説します。
乳房の視触診
乳房を視診するとは、乳房の形状や分泌物を目で見て所見をとるということです。
えくぼと呼ばれるひきつれがあるか、ただれがあるか、乳房の形の左右差、乳頭からの分泌物の有無を確認します。
触診とは、指で乳房からわきの下を診察して、しこりの有無、大きさ、固さ、動き方などを確認します。
マンモグラフィー検査
マンモグラフィーは、レントゲンで病変の位置と広がりを調べるための乳房に特有の画像検査です。
乳腺の重なりを少なくするために、2枚の板の間に乳房を挟んで圧迫し、薄くして撮影します。
小さな病変や、超音波検査では発見できない微細な石灰化を見つけることができ、早期の癌を診断できる方法です。
しかし、マンモグラフィーで高濃度乳腺とされる方が日本人の10%程度います。これは乳腺の組織が通常より白く映ってしまう方です。
高濃度乳腺の場合、もとの乳腺の背景が白く見えるために、病変(白く見える)が発見しにくいという問題点があります。
超音波(エコー)検査
超音波検査では、乳房内病変の有無、しこりの大きさや性状、リンパ節転移の有無を調べます。
上記の高濃度乳腺の方、妊娠中の方にも施行でき、被曝がありません。反対に、石灰化病変を見つけるのには向きません。
40代未満の患者さんには、マンモグラフィーよりエコー検査が勧められます。
MRI検査
現在、MRI検査はマンモグラフィーやエコー検査で病変が見つかった患者さんに対して実施する精密検査、術前検査に位置づけられています。
乳房の中の病変の広がり方を診断したり、多発する病変を検出したりして、手術の際の切除範囲の参考にします。
乳房のMRI検査では磁気とガドリニウム造影剤を使用します。
被曝はありませんが、ペースメーカーやチタンなどの金属が入っている方や腎臓病や喘息、アレルギーのある患者さんは合併症を起こすリスクがあります。
遺伝子学的検査
乳がんの患者さんや、乳がんを心配する患者さんに対して実施する遺伝子学的検査はBRCA遺伝子学的検査です。
BRCA遺伝子は、HBOC(遺伝性乳癌卵巣癌症候群)の発症に関係する遺伝子です。検査は採血での実施が可能です。
BRCA遺伝子学的検査は、全員に勧められる検査ではありません。
下記のような患者さんには推奨されています。
BRCA遺伝子学的検査が推奨される患者
- 血縁者がすでにBRCA1/2の以上が発覚している
- 45歳以下で診断された乳癌
- 両側または片側に2個以上の原発性乳がんを診断された
- 男性で乳がんと診断された
- 血縁者(第三度近親者以内)に乳癌または卵巣癌,膵癌患者がいる
ほかにも、癌と診断されたあと、癌の型で検査が勧められる場合があります。
また、癌を発症している場合には検査は保険診療ですが、発症していなければ自費診療です。高額となるため注意しましょう。
▼関連記事:がんは遺伝するの?遺伝しやすいがんや検査方法・予防方法を解説!
自治体で受けられる乳がん検診
乳がん検診は、自治体で受けられます。どのような検査を受けられるのか、解説します。
住民検診を受けられる年齢
自治体で実施される乳がん検診は、症状のない場合先述したように40歳以上となります。
早期の乳がんは多くの場合自覚症状がないですが、しこり、乳房のひきつれ、乳頭から血性の液が出るなど症状がある場合には検診を待たない方がよいでしょう。
すぐに医療機関を受診する必要があります。
住民検診を受ける方法
住民健診は、集団会場か医療機関で乳がん検診を受ける方法があります。
集団会場での乳がん検診は、特定健診や定期健康診断などとセット、乳がん検診のみの実施、子宮頸がん検診とセットなど企画されることがあります。
自治体が実施するがん検診で集団検診を選択する際は、自治体の保健センターや公民館などが会場です。自治体のHPや自治体からのお知らせ、保健所のお知らせを確認し、予約が必要です。
医療施設での受診は、受診者自身が医療施設の予約を取り、予約した日時に医療施設へ赴きます。
補助対象となる指定医療施設があるので、その中から受診先を選択します。こちらも自治体のHPか、受診する医療機関への問い合わせが必要です。
なお、乳がん検診では、前日や当日の食事についてとくに制限はありません。
大半の市町村では、がん検診の費用の多くを公費で負担しており、一部の自己負担でがん検診を受けることが可能です。自己負担金額は平均1,000〜2,000円です。
住民検診の主な内容
住民検診では、問診とマンモグラフィーを実施することとされています。乳房の視触診は必須項目ではありません。選択制とされている自治体もあります。
問診では、月経及び妊娠などに関する事項、自覚症状の有無、検診受診状況を質問されます。
マンモグラフィーは、上半身裸で、片方ずつおこなう乳房のレントゲン検査です。脱ぎ着しやすい、上下セパレートの洋服を着用する方がよいでしょう。
乳房を圧迫する時間は片側数十秒ほどで、痛みを感じることもあります。月経前1週間を避けると痛みが少ない傾向があります。
乳房をうすく広げることにより、異常を見つけやすくなり、また放射線による被ばく量も減らすことが可能です。
▼関連記事:横浜市がん検診の種類や費用についてわかりやすく解説!
自治体以外で乳がん検診を受ける方法
自治体で乳がん検診を受けようと考えると、時間や曜日が限られていたり、ほかの検査と同時にできなかったりと不都合がある方もいるでしょう。
40歳前でも乳がん検診を受けたい場合には、自治体の補助を受けずに自費で検診をうけることもできます。
自治体以外で乳がん検診を受ける方法は、職場検診と人間ドックの2つです。
職場の健康診断
企業に勤めている女性は、企業が独自に実施する健診で乳がん検診を受けられる可能性があります。
事業者におけるがん検診も、厚生労働省によりガイドラインが作成されています。
ガイドラインの内容は自治体による検診と同様なため、同質のものを勧めているといえます。対象年齢や検査内容に条件があるため、勤務先の乳がん検診への取り組みを調べる必要があります。
たとえばトヨタ自動車では、20歳以上の女性を対象に年に1回、契約する医療機関もしくは巡回バスで実施しています。
乳がん検診と子宮頸がん検診をいずれも1,000円の負担額で受診可能です。
また専業主婦の女性も、夫が会社員の場合は、被扶養者として乳がん検診を受けられる可能性があります。
さまざまな補助や検診を受けられる場合があるので、勤務先の条件を調べてみましょう。
人間ドックなど自費検診
症状がなく、自治体での検診も受けられない条件で、勤務先の企業もがん検診のシステムを持っていない場合、医療施設が独自に設定している自費検診(たとえば人間ドック)を受けることが可能です。
ただし、その場合は全額自己負担となるため、注意が必要です。
一方、対象年齢や検診頻度などの制限がなく、自治体や企業の乳がん検診に含まれない検査を受けられ、検査方法を選べることがメリットです。
乳がんの検査をおこなっている医療施設や人間ドックに直接予約すると、受診できます。
20代・30代でも乳がん検査を受けた方がよい方
自治体のがん検診は40歳からですが、それより早い30代後半から、乳がんの罹患率は増加し始めます。
リスクの高い方の中には、40代より早く乳がん検診を受けた方がよい方がいます。
どのような方が20代、30代で乳がん検診を受ける方がよいのか、について解説します。
遺伝的に乳がんの発症リスクの高い方
乳がんの発症のリスクの高い遺伝性の疾患を遺伝性乳がん卵巣がん症候群といいます。
遺伝性乳がんは、乳がんの中で5〜10%です。
遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の方は、次のような特徴があります。
遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の特徴
- 若い年齢(40歳未満)で乳がんを発症しやすい
- 両側の乳房に乳がんができやすい
- 卵巣がんを発症しやすい
- 家族のなかに乳がんまたは卵巣がんの患者さんが複数いる
- 家族のなかに男性の乳がん患者さんがいる
引用:遺伝性乳がん、治療の進め方は?診断・治療後の対応は? – がんプラス (qlife.jp)
したがって、家族に乳がんまたは卵巣がんの患者さんがいる場合や遺伝性乳がんの診断がすでに確定している場合、20代、30代のうちに乳がんを発症するリスクがあります。
あてはまる方は、40歳を待たずにがん検診を受けることが必要です。遺伝学的検査を受ける選択肢もあるため、早めに医療機関を受診しましょう。
自覚症状のある方
しこりがある、乳頭から分泌物が出ている、ひきつれがあるなどの症状がある場合、年齢や検診の頻度に関係なく病院を受診しましょう。
その場合は乳がん検診ではなく、症状と病名が結びつけば保険診療となります。
年齢にかかわらずすべての女性におすすめのセルフチェック
20代、30代の女性で、遺伝性乳がんの方も周りにいない方は、がん検診は必要ないと思う方もいるでしょう。
しかし、がん検診を受診する前の若い女性にも、乳房のセルフチェックが勧められています。自身で乳房のセルフチェックをすることを、ブレストアウェアネスといいます。
ここでは、有効な方法や頻度を解説します。
セルフチェック(自己検診)とは
乳がんを早期発見するために有効といわれている方法が、乳房のセルフチェック、ブレスト・アウェアネスです。
ブレスト・アウェアネスには4つのポイントがあります。
ブレスト・アウェアネスのポイント
- 普段から自身の乳房の状態や月経周期による変化を知っておきましょう。
- 乳房の変化に気を付けましょう。
- 気になる変化に気づいたときには、検診を待たずにすぐに乳腺外来のある医療機関を受診しましょう。
- 自覚症状がなくても、40歳から2年に1回、定期的に検診を受診しましょう。
引用元:乳がんを早期発見するためのブレスト・アウェアネス|とうきょう健康ステーション (tokyo.lg.jp)
普段から乳房の状態を知ると、些細な変化に気づきやすくなります。乳房の張りや変化に敏感になりましょう。
しこりを探すための触診ではなく、気軽に意識することが重要です。
セルフチェックの方法
鏡に向かって下記のような姿勢を取り、乳房の変化をチェックします。
- 両手を上げる
- 両腕をまっすぐにおろす
- 両腕を腰に当てる
ひきつれ、くぼみ、ただれなどがないかチェックします。
また、次のポイントもチェックをおこないます。
- 乳房全体をゆっくり触ってみて、腫瘤の有無(泡をつけてやってもよい)
- 乳頭の分泌物
- 乳頭や乳輪の皮膚のただれ
- 皮膚のひきつれ
- 乳房の痛み
セルフチェックの頻度
厚生労働省からは、セルフチェックは月に一度以上実施することが勧められています。
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まとめ
40代以降には乳がん検診を定期的に受けることが勧めらており、20代、30代でリスクのある方は、ほかの方法でも乳がん検診やセルフチェックがおこなえることを解説しました。
本記事をぜひ参考にして、セルフチェックをおこなって自身の乳房に関心を持ちましょう。
変化に気づき、がん検診を受診して早期に乳がんを発見できるようにぜひ意識を高めてみてください。
<参考文献>
乳房:[国立がん研究センター がん統計] (ganjoho.jp)
総説1 日本人女性の乳癌罹患率,乳癌死亡率の推移 | 疫学・予防 | 乳癌診療ガイドライン2022年版 (xsrv.jp)
出力用.ai (mhlw.go.jp)
高濃度乳腺(デンスブレスト)について|豊島区の目白乳腺クリニック|土日診療 池袋・新宿近く (mejiro-breast.jp)
乳癌BQ1.どのような乳癌患者にBRCA遺伝学的検査を推奨するか? | 遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)診療ガイドライン 2021年版 (johboc.jp)
Q4.乳がんと遺伝について | ガイドライン | 患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版 (xsrv.jp)
乳がんを早期発見するためのブレスト・アウェアネス|とうきょう健康ステーション (tokyo.lg.jp)
胃がん・乳がん検診に関する指針の改正について
遺伝性乳がん、治療の進め方は?診断・治療後の対応は? – がんプラス (qlife.jp)
乳がんを早期発見するためのブレスト・アウェアネス|とうきょう健康ステーション (tokyo.lg.jp)
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