咽頭がんは、女性より圧倒的に男性がかかりやすいがんです。
しかし、2019年には7,208人の女性が口腔・咽頭がんと診断されており、毎年2,000人以上の方が亡くなっています。※1
とくに、タバコを吸う方、アルコールの飲酒量が多い方は発症リスクが高く、注意が必要です。
そのほか、咽頭がんの発症には、HPV(ヒトパピローマウイルス)やEBV(エプスタイン・バール・ウイルス)の感染も深く関与しています。
本記事では、咽頭の構造・機能をはじめ、咽頭がんの種類や原因、女性が咽頭がんに罹患するリスクなどを詳しく解説します。
咽頭がんに関する知識を深めて、万が一のときに備えましょう。
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咽頭とは?
咽頭(いんとう)とは、鼻と口の奥から食道につながる気道および消化管の一部で、空気や飲食物の通り道です。
はじめに、咽頭の構造・機能を詳しく解説します。
咽頭の構造
咽頭は、筋肉と粘膜で構成された約13cmの筒状の器官であり、下記の3つの部位に分かれます。
- 上咽頭(じょういんとう)
- 中咽頭(ちゅういんとう)
- 下咽頭(かいんとう)
上咽頭は喉頭の上の部分で、鼻の奥にあり、中咽頭は口を開けたときに見える部位です。下咽頭は咽頭の最も下部にあり、食道と気管に隣接しています。
それぞれの部位が作用し、呼吸と嚥下をおこないます。
咽頭の機能
喉頭には、下記の3つの機能があります。
- 呼吸機能
- 嚥下機能
- 発声機能
鼻、または口から取り込まれた空気は、喉頭を通り気管から肺に入ります。咽頭は、空気を体内に運ぶ通路として非常に重要な器官です。
また、咽頭は食べ物を口から中咽頭・下咽頭・食道へと順序よく送り、口へ逆戻りしないよう働き、飲み込むときには咽頭を固く閉じて、鼻・喉頭・気管に入らないよう防ぎます。
もう一つの機能は、発声機能です。
咽頭の内咽頭筋と呼ばれる筋肉が、声帯をコントロールし、呼気流の強弱を加えて声を出しています。
咽頭がんの種類別の特徴・原因
咽頭がんには、下記の種類があり、特徴や発症原因が異なります。
種類 | 特徴 | 原因 |
---|---|---|
上咽頭がん | 発生頻度が低い60歳後半に多い13~39歳代でも発症するケースがある | 飲酒、喫煙、EBVの感染 |
中咽頭がん | 50歳以降の男性に多い40歳代でも発症する | 喫煙、飲酒、HPVの感染 |
下咽頭がん | 男性に多い60~80歳代が発症しやすい | 飲酒、喫煙 |
次章で詳しく解説します。
上咽頭がん
日本では、上咽頭がんの発生頻度は低く、罹患数は年間750万人程度です。中国南部や東南アジアに多く発生する地域があります。※2
発症のピークは60歳代ですが、15~39歳の若い世代でも発症するケースがあります。※3
発症の原因は、飲酒、喫煙のほか、EBV(エプスタイン・バール・ウイルス)の感染です。また、一部の地域で食されている塩漬けした魚の摂取との関連も疑われています。
上咽頭がんが疑われる場合、喉の触診や経鼻内視鏡検査で状態を確認し、内視鏡下で腫瘍の一部を採取して生検をおこないます。
上咽頭がんは、手術が困難な部位に発症するため、放射線治療が中心です。必要に応じて抗がん剤を併用します。
中咽頭がん
中咽頭がんの年間罹患数は約3,200人で、男性は女性に比べて発症しやすい傾向にあります。※4
50~60歳代に多くみられますが、40歳代でも発症するケースがあります。※5
主な発症要因は飲酒、喫煙です。また、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染も発症リスクを高めることがわかっています。
中咽頭がんは、口から手を入れて届く範囲に発症するため、医師が指で直接がんの有無を確認し、経口または経鼻内視鏡検査と生検の結果で診断されます。
同時に、HPV感染の有無を調べることが多いです。
早期に発見された場合は、手術や放射線治療のみで治療をおこないます。必要に応じて、嚥下や発声の機能をできる限り保つよう、再建手術を実施します。
下咽頭がん
下咽頭がんと診断される人は、年間で約4,200人です。とくに、60歳以降の男性に多く、罹患数は女性の約10倍です。※6
発症には飲酒と喫煙が強く関連しており、下咽頭がんと同時、あるいは異なる時期に、口腔、喉頭、食道などの臓器にもがんが見つかるケースが少なくありません。
下咽頭がんは、多くの場合、進行がんで発見され、症例の約67%はすでに頸部リンパへの転移がみられます。※7
視診・触診、経鼻内視鏡検査、生検の結果で診断し、CT・MRI・PET検査などでがんの転移、広がりの有無を確認します。
主な治療方法は、内視鏡下での経口的な手術、外科手術、放射線治療です。
進行がんは、発声の気管である「喉頭」も摘出せざるを得ないケースが多く、声が出なくなるため、発声法(食道発声、シャント発声など)や、電気式人工喉頭を使用したリハビリテーションが必要になります。
女性でも咽頭がんに罹患する?
咽頭がんは、男性の罹患数が多いがんです。
しかし、女性でも咽頭がんになる可能性はゼロではありません。2019年には、7,208人の女性が咽頭がんと診断されています。※8
次章では、咽頭がんのリスクや患者数の変化を紹介します。男性はもちろん、女性もぜひ参考にしてみてください。
飲酒・喫煙でリスクが上昇する
飲酒と喫煙は、咽頭がんの確実なリスクです。
国立がん研究センターが公開した研究結果では、男性の喫煙者は約5.4倍、女性の喫煙者は約2.5倍、口腔・咽頭がんの罹患リスクが増えています。※9
喫煙歴や1日の喫煙本数から算出する「累積喫煙指数」が大きいほどリスクは上昇し、部位別では、とくに下咽頭がんの発症リスクが高いです。
飲酒も口腔・咽頭がんの要因の一つです。飲酒量が多い男性で約3.2倍、女性で約5.9倍、罹患リスクが増加します。※10
また、飲酒と喫煙の両方の習慣がある男性は、約4.1倍とさらにリスクが上がります。※11
口腔・咽頭がんのリスクを下げるためには、禁煙、そして飲酒量を控えることが重要です。
男女ともに増加している
口腔・咽頭がんは、男女ともに増加傾向にあります。
下記は、罹患数の推移表です。
性別 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 |
---|---|---|---|---|
男性 | 15,205人 | 15,398人 | 15,679人 | 16,463人 |
女性 | 6,396人 | 6,635人 | 6,836人 | 7,208人 |
2016~2019年の4年間で、男性は1,258人、女性は812人増えています。
とくに、中咽頭がんの罹患が急増しており、10年前と比べて男性は約2.5倍、女性は約3倍も増加しています。※12
理由は、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染の増加です。新たに診断される患者の半数以上が、HPVの関与が疑われています。※13
咽頭がんに初期症状はある?
ここからは、咽頭がんの自覚症状を紹介します。
咽頭がんの罹患リスクが高い方は、ぜひ参考にしてみてください。
初期の自覚症状はほぼない
多くの場合、咽頭がんは初期の自覚症状がありません。
万が一、初期の段階で症状があらわれたとしても、軽度の鼻づまり、喉の痛み、声のかすれなど、風邪とよく似ているため、咽頭がんを疑う方は少ないでしょう。
進行にともない、鼻・耳・目・口・喉などにさまざまな異変が生じます。
種類別にみる主な症状
初期の咽頭がんは無症状な場合が多く、進行とともにさまざまな症状があらわれます。気になる症状がある方は、早めに医療機関を受診しましょう。
上咽頭がん
鼻の症状(鼻づまり・鼻血など)、耳の症状(耳の閉塞感や違和感など)、脳神経からくる目の症状(見えにくい、ものが二重に見えるなど)があらわれる場合もあります。
頸部のリンパ節に転移しやすいことから、首のしこりにより発見されるケースが多いです。
中咽頭がん
初期に軽度の喉の異物感・違和感があらわれる場合があります。
進行すると、激しい喉や耳の痛み、口の奥・喉・首のしこりがあらわれ、口を開けにくい、舌を動かしにくい、息苦しいなどの症状や、声が変化する場合もあります。
下咽頭がん
進行にともない、喉の痛み・違和感、飲み込みにくさや息苦しさ、声がれ、血痰などの症状があらわれます。
咽頭がんの検査方法・治療法
ここからは、咽頭がんの検査方法・治療法を紹介します。
正しい検査方法や治療法に関する知識を深め、万が一のときに備えましょう。
検査方法
咽頭がんの検査方法は、下記のとおりです。
- 触診
- 内視鏡検査
- 生検
- 画像検査
咽頭がんの最初の検査は、触診です。首を触り、リンパ筋への転移を確認します。中咽頭付近に違和感があるときは、医師が口から指を入れてがんの有無を調べます。
次は、内視鏡検査です。鼻や口からカメラを入れて咽頭の状態を観察し、がんが疑われる組織の一部を採取して検査する生検をおこないます。
採取した組織を使い、中咽頭がんの発症に関与するHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染検査を実施する場合もあります。
がんと診断された場合、がんの広がり・転移の有無を詳しく調べるために、首のエコー検査やCT検査、MRI検査、PET検査などの画像検査が必要です。
治療法
咽頭がんの治療法は、がんが発症した場所により異なりますが、主に下記の3つです。
- 放射線治療
- 手術治療
- 化学放射線療法
放射線治療は、手術が困難な上咽頭がんの標準治療です。ステージにかかわらず、体の表面から30~35回ほど放射性を照射し、がんの消滅を目指します。※14
手術治療には、切開によるがんの切除と経口的切除があり、がんの部位やステージなどを考慮して選択されます。
手術で嚥下機能や発声機能を失った場合、体内の別の組織を移植する再建手術が必要です。
化学放射線療法は、化学(薬物)治療と放射線治療を併用する手法です。主に進行がんに対して治療効果を高めるためにおこなわれます。
マイクロCTC検査で全身のがんリスクを検査
マイクロCTC検査は、咽頭がんを含む全身のがんリスクが明確になる血液検査です。
がん細胞のサイズや発症した場所にかかわらず、血中に漏れ出したがん細胞を直接キャッチするため、従来の画像検査より早くがんのリスクがわかります。
咽頭がんをはじめ、自覚症状に乏しいがんの早期発見に有効です。
ここからは、マイクロCTC検査の仕組みや流れ、料金などを詳しく解説します。
検査の仕組み
がん細胞は、独自に新しく血管新生をつくり、周囲の血管から酸素や栄養を得て増殖を図ります。
その際、がん細胞は血管内に漏れ出すことがわかっており、マイクロCTC検査は血中に漏れ出したがん細胞そのものを捕捉して、がんリスクを明確にします。
がん細胞には「上皮性がん細胞」と「間葉系がん細胞」があり、多くの場合、上皮性がん細胞は自己の免疫で抑えることが出来る可能性があります。
しかし、間葉系がん細胞は、リンパ筋やほかの臓器に浸潤・転移するリスクが高く、注意が必要です。
マイクロCTC検査は、悪性度が高い間葉系がん細胞のみを捉え、個数までも明示するため、圧倒的な納得感が得られます。
全国の提携医院で検査可能
マイクロCTC検査は、全国の提携先の医療機関で検査が受けられます。
わざわざ遠方の大きな病院にいく必要はなく、自宅や会社の近辺や、通勤や買い物の途中などに立ち寄れる医院・クリニックを選ぶことが可能です。
また、検査の所要時間は1回5分と非常にスピーディであるため、忙しい方でも受診しやすいでしょう。
全国の医療機関で採取した血液検体は、直ちに国内の検査センターで専門の臨床検査技師が丁寧に分析します。
迅速な検査体制と検査精度を確立していることも、マイクロCTC検査の魅力の一つです。
検査の流れ・料金
マイクロCTC検査の流れを紹介します。
- 予約・会員登録
- 問診票の入力
- 検査(採血)
- 検査結果
マイクロCTC検査の公式サイトから、受診を希望する医院・クリニックを選びましょう。検査予約および検査結果の確認には、会員登録が必要です。
マイページにログイン後、問診票を入力し、支払い方法の選択と予約内容の確認をします。
検査当日は、予約した時間の10分前に来院し、受付を済ませましょう。受付後、採血をおこない検査は終了です。
検査から約1~2週間で、マイページから検査結果の確認ができます。
がん細胞が検出された方に対して無料相談を実施しており、検査結果に関する質問、専門医や医療機関の紹介に対応しています。遠方の方はオンライン面談の利用が可能です。
無料相談を受ける場合、カルテ作成料として初診料3,300円(税込)がかかります。※15
マイクロCTC検査は、1回198,000円(税込)です。※16
女性の咽頭がんに関するよくある質問
最後に、女性の咽頭がんに関するよくある質問を紹介します。
同じような疑問を抱いている女性は、ぜひ参考にしてみてください。
5年生存率は?
咽頭がんの部位別・ステージ別の5年生存率は、下記のとおりです。
ステージⅠ | ステージⅡ | ステージⅢ | ステージⅣ | |
---|---|---|---|---|
上咽頭がん | 92% | 84% | 67% | 52% |
中咽頭がん | 86% | 80% | 65% | 50% |
下咽頭がん | 70% | 62% | 60% | 35% |
上咽頭がんは、放射線治療に対する反応がよい腫瘍が多く、ステージⅠの5年生存率は92%と高く、ステージⅣでも50%以上をキープしています。
一方、下咽頭がんは、すでに発見したときには頸部のリンパ筋へ転移しているケースが多く、頭頸部がんのなかで最も5年生存率が低いです。
見た目でわかる?
咽頭がんは、赤みや白みを帯びた、しこりや腫瘍があらわれる場合があります。
しかし、直接目で確認できるものは、口を開けた場所に発症する中咽頭がんのみです。上咽頭がんや下咽頭がんは、内視鏡検査を受けない限り、発見できません。
咽頭がんは、耳鼻咽喉科の領域です。気になる症状がある際は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。
どの年齢で多い?
下記は、口腔・咽頭がんの年齢別の罹患数です。
40~49歳 | 50~59歳 | 60歳~69歳 | 70歳~79歳 | |
---|---|---|---|---|
男性 | 864人 | 2,060人 | 4,610人 | 5,711人 |
女性 | 800人 | 1,944人 | 4,035人 | 5,592人 |
男女ともに、口腔・咽頭がんは50歳代で急増し、60歳代、70歳代と歳を重ねるごとに患者数が増えています。
しかし、若い世代でも上咽頭がんを発症する可能性はゼロではありません。
10~30歳代の上咽頭がんの発見時には、頸部のリンパ筋への転移がみられた症例が多く、全体の60%にも及びます。※17
まとめ
本記事では、咽頭の概要から、咽頭がんの種類・原因・症状、罹患リスクなどを詳しく解説しました。
空気や飲食物の通り道である咽頭は、上咽頭・中咽頭・下咽頭に分かれており、呼吸機能・嚥下機能・発声機能を備えている重要な器官です。
咽頭がんの主な原因は、飲酒、喫煙、HPV(ヒトパピローマウイルス)やEBV(エプスタイン・バール・ウイルス)の感染です。
発症した部位により原因・症状が異なり、検査方法や治療法も異なります。
咽頭がんは、初期の自覚症状があらわれないケースが多く、発見時にはすでに頸部のリンパ筋に転移している場合もあります。
無症状のがんの発見には、マイクロCTC検査がおすすめです。
マイクロCTC検査は、がん細胞が増殖の過程で血中に漏れ出す性質に着目した、先進的な血液検査です。
症状があらわれにくい、小さながん細胞をも直接捉え、全身のがんリスクを明示します。
健康なうちからマイクロCTC検査を活用し、がんの早期発見・早期治療を目指しましょう。
〈参考サイト〉
※1、※8:国立がん研究センター がん統計|口腔・咽頭
※2、※3、※4、※6:日本頭頸部癌学会 頭頸部がん情報|臓器別の診断治療の概要
※5:日本赤十字社 伊勢赤十字病院|各種がんの解説 中咽頭がん
※7:愛知県がんセンター|下咽頭がんとは
※9、※10、※11:国立がん研究センター|喫煙、飲酒と口腔・咽頭がん罹患リスクについて
※12、※13:耳鼻咽喉科・頭頸部外科|HPV関連中咽頭がん-意外と知らない
※14:国立がん研究センター|上咽頭がん 治療
※15、16:マイクロCTC検査 | 血中のがん細胞を捕捉するがんリスク検査
※17:横浜市立大学医学部 耳鼻咽喉科学教室|若年者上咽頭癌症別の検討