前立腺がんは、日本人の男性が最も多く発症するがんです。※1
そのため、「自身も前立腺がんになるのではないか」と不安を抱く男性もいるのではないでしょうか。
しかし、受けるべき検査や治療方法を知らない方も少なくありません。
本記事では、前立腺がんについて解説し、PSA検査による前立腺がんの早期発見方法や、検査や治療に関する具体的な情報を提供します。
また、最新の「マイクロCTC検査」を用いて全身のがんリスクを評価する方法もあわせて紹介します。ぜひ参考にしてください。
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前立腺がんとは?
前立腺がんは、男性の前立腺に発生するがんで、とくに高齢者に多く見られます。
初期段階では症状がなく、進行が遅いことが特徴です。
次章では、前立腺がんの主な症状やリスク要因について詳しく解説します。
男性に最も多いがん
前立腺がんは、男性において最も多く見られるがんです。※2
罹患数は年齢とともに上昇し、50歳後半から増えはじめ、60歳で急激に増加し、70歳でピークを迎えます。※3
前立腺は、膀胱の出口側に位置しており、尿道の周りを取り囲むように存在する、男性のみが持つ臓器です。
前立腺液を分泌して精子の運動を活発にする働きがあり、加齢に伴い大きさを増すことがわかっています。
そのため、高齢者は前立腺がんや前立腺肥大症のリスクが大きいといえるでしょう。
前立腺がんは、がんのなかでも5年生存率が最も高く、早期に発見・治療すれば完治する可能性が高いがんです。※4
早期に異常を発見し、適切な治療を受けるために、定期的な検診を受けましょう。
主な症状
前立腺がんは初期症状に乏しいため、自覚が難しい病気です。
がんが進行すると次の症状が現れます。
- 排尿困難・残尿感
- 頻尿
- 血尿
- 腰・背中の痛み
前立腺に生じたがんが尿道を圧迫するため、尿が出にくくなる、途中で途切れる、残尿感があるなどの症状が出る場合があります。
また、膀胱が刺激されて、とくに夜間に排尿の数が増えるケースも少なくありません。そのほか、尿に血が混じる、腰や背中などに痛みが生じるなどの症状が報告されています。
心当たりがある方はすぐに医療機関を受診しましょう。なお、前立腺全般の症状に関しての診察・治療は、泌尿器科で受けられます。
リスクを高める原因
前立腺がんのリスクを高める要因は次のとおりです。
- 加齢
- 生活習慣
- 食生活
- ホルモン
- 家族歴
前立腺がんは、加齢に伴いリスクが増加し、とくに60歳以上の男性は高リスク群に分類されます。※5
また、運動不足、喫煙・過度な飲酒などの生活習慣や、動物性脂肪の摂取量が多く、野菜・果物の摂取量が少ない食生活も、リスクを増やす要因です。
そして、前立腺がんは男性ホルモンの影響を受けて増殖するため、テストステロン値が高い方も注意が必要です。
そのほか、遺伝的要素も前立腺がんのリスク因子として認められています。父親または兄弟の1人が前立腺がんを発症した場合、前立腺がんの罹患率は2倍に上昇します。※6
前立腺がんを早期発見できるPSA検査とは?
前立腺がんは、早期発見が治療の鍵となります。
前立腺がんの早期発見に非常に有効な手段がPSA検査です。
ここからは、PSA検査の仕組みと重要性について解説します。
血液検査でPSA値を調べる
PSA検査は、前立腺から分泌されるタンパク質の一種である特異な抗原(PSA)の濃度を測定する、血液検査です。
通常、PSAが血中に含まれる量はごく微量ですが、前立腺疾患を患っている場合、血中PSA濃度が上昇します。
PSA値が高い場合、前立腺がんや前立腺肥大などの異常が疑われるため、前立腺がんの早期発見マーカーとして有用です。
たとえば、50歳以上の男性が定期的にPSA検査をおこなえば、前立腺がんは無症状の段階で発見可能となり、早期治療につながります。
定期的なPSA検査は、前立腺がんの治療成功率を高めるために非常に重要です。
PSAの基準値
PSA値の基準値は年齢により異なります。
年齢別PSA基準値は次のとおりです。
年齢別PSA基準値
- 50~64歳:0.0~3ng/mL
- 65~69歳:0.0~3.5ng/mL
- 70歳以上:0.0~4ng/mL
PSAの基準値は年齢に応じて変わりますが、64歳未満で3ng/mL、70歳未満で3.5ng/mL、70歳以上で4ng/mLが正常の範囲です。※7
一方、グレーゾーンと呼ばれるPSA値4〜10ng/mLの場合、前立腺がんの可能性が高く、その割合は25~40%です。※8
多くの医療機関では、人間ドックや健康診断の追加オプションとしてPSA検査を用意しています。
50歳以上の男性の方は、PSA検査を活用し、自身の前立腺がんのリスクを把握しましょう。
前立腺がんが疑われる場合の検査方法
前立腺がんが疑われる場合には、次の検査をおこないます。
- 直腸診
- 超音波検査
- MRI検査
- 生検
- 画像検査
次章では、それぞれの検査方法を詳しく解説します。
検査方法により、がんの有無の確認や進行度評価などの目的が異なるため、医師の判断に従い、適切な検査を受けましょう。
直腸診
直腸診は、医師が指を肛門から挿入し、前立腺を直接触診する方法です。
前立腺の大きさ、形、硬さを確認し、がんの兆候の有無を調べます。
直腸に隣接している前立腺の背側に発症したがんの発見に有効で、医療機関により、身体の負担を軽減するために局所麻酔を用いる場合があります。
超音波検査
超音波検査(エコー)は、肛門から超音波を発するプローブを挿入し、前立腺の大きさや形を画像で観察する方法です。
がんが存在する場合、黒い影として映し出されます。
超音波検査は前立腺の詳細な画像を描写でき、がんの位置や広がりを把握できます。
MRI検査
MRI検査は、前立腺がんの局在診断に非常に有用で、がんの正確な位置や、周囲組織への浸潤の評価に適している精密検査の一つです。
T2強調画像や拡散強調画像と呼ばれる撮影方法を用いて、前立腺内の異常を高精度で検出します。
体内に金属がある方は、検査を受けられないケースがあるため、事前に報告する必要があります。
生検
前立腺生検は、前立腺がんの確定診断をおこなうための検査です。
自覚症状をはじめ、直腸診、超音波検査などの検査により、前立腺がんの疑いが強い場合におこなわれます。
前立腺生検の方法は、エコーを使用して前立腺の状態を確認しながら、直腸から細い針を挿入し、組織の一部を採取します。
採取した前立腺組織で病理診断をおこない、がんの有無や悪性度評価などの確定診断が可能です。
前立腺生検には出血や感染症、排尿困難などの合併症リスクがあるため、実施された場合は、検査後の体調に注意しましょう。
画像検査
がんの広がりや転移を評価するために、CT検査や骨シンチグラフィなどの画像検査がおこなわれます。
MRIも画像検査に含まれますが、MRIは前立腺がんの評価、CT検査・骨シンチグラフィはがん転移評価を目的におこないます。
CT検査は、リンパ節や肺への転移、骨シンチグラフィは骨への転移を確認する検査です。
マイクロCTC検査は全身のがんリスクを判定
前立腺がんに加え、他のがんリスクも評価できる検査が、マイクロCTC検査です。
マイクロCTC検査は、血液中に存在するがん細胞を検出し、全身のがんリスクを評価できます。
ここからは、マイクロCTC検査の特徴を詳しく解説します。
がん細胞を捕捉して個数まで提示する
マイクロCTC検査では、米国のMDアンダーソンがんセンターが開発した高精度の抗体を使用し、血液中に漏れ出したがん細胞そのものを捉え、個数を明示します。
従来の検査では、1cm未満のがんを見つけることは困難です。また、がんが発症した部位により、発見が遅れるケースも少なくありません。
マイクロCTC検査は増殖を開始した1mm程度のがん細胞を、特異度94.45%の高精度で検出します。※9
そのため、がんの大きさにかかわらず、全身のがんの早期発見につながります。
検査は1回5分の採血のみ
マイクロCTC検査の最大の特徴は、手軽さです。検査は採血のみでおこなわれ、わずか1回5分で完了します。
従来のがん検査では、PET-CTやMRIなど時間と費用がかかる方法が一般的でしたが、マイクロCTC検査は短時間で実施可能です。
忙しいビジネスマンや家庭を持つ主婦でも手軽に受けられる検査として、多くの方に有益なツールとなるでしょう。
さらに、従来のがん検査と比較して侵襲性が低く、患者の負担が少ないことも大きなメリットとなります。
前立腺がんの治療方法
前立腺がんの治療は、がんの進行度や転移の有無により異なります。
次に、転移がない場合と転移がある場合の治療方法に分けて詳しく解説します。
転移がない場合
前立腺がんが転移していない場合、治療の目的はがんの完全な除去です。
主な治療方法は次のとおりです。
治療方法 | 特徴 |
手術 | 開腹・腹腔鏡・ロボット手術による前立腺全摘除術。 健康な状態であれば、余命が10年以上と診断される。 入院期間は2週間程度。 |
放射線療法 | x線を照射し、がん細胞を破壊して小さくする治療法。 手術に比べて身体的な負担が少なく、高齢者も可能。 1日1回、週5回照射し、約1か月程度の治療期間が必要。 |
小線源治療 | 放射線を出す線源を体内に留置し、がん細胞を死滅させる治療法。 合併症や勃起障害が比較的少ないことが利点。 入院は、3~4日程度。 |
転移がある場合
前立腺がんが転移している場合、完治は困難なため、がんの進行の遅延や、症状の緩和が治療の目的になります。
主な治療方法は次のとおりです。
治療方法 | 特徴 |
ホルモン療法 | 男性ホルモンの分泌や働きを抑えて、がん細胞の増殖を抑制する治療法。 投与期間は用いる薬剤により異なる。 |
化学療法 | 抗がん剤を使用してがんの細胞分裂を抑制する。 痛みの減少効果もあり、多くの場合、外来治療で受けられる。 |
その他の治療法 | 疼痛緩和の効果がある薬物を投与し、QOLを考慮した緩和的ケアをおこなう。 必要に応じて、DNA修復の作用があるオラパリブを投与する。 |
前立腺がんの検査に関するよくある質問
前立腺がんの検査については、多くの方がさまざまな疑問を抱いています。
最後に、よくある質問について解説します。ぜひ参考にしてください。
PSA検査は何歳から受けたほうがよい?
PSA検査は、前立腺がんの早期発見に非常に有効です。
一般的には、50歳以上の男性に対して定期的なPSA検査が推奨されています。
また、家族に前立腺がんの既往歴がある場合や、自身が前立腺がん高リスク群に属する場合は、早期のPSA検査を考慮するべきです。
PSA検査の費用は?
PSA検査の費用は、自費診療と保険診療のどちらを選ぶかにより異なります。
自覚症状がなく検診目的でPSA検査を受ける際は、自費診療となり、費用は2,000〜3,000円です。※10
一方、前立腺がんの疑いがあり医師が必要と判断した場合は保険が適用されるため、費用は300~500円程度でPSA検査が受けられます。※11
また、自治体により、PSA検査の費用を助成する制度があり、500~2,000円程度の自己負担で検査が可能です。※12
PSA検査を検討している方は、まず自治体の情報を確認するとよいでしょう。
5年生存率は?
前立腺がんの5年生存率は99.1 %と、全がんのなかで最も高い数値です。※13※14
しかし、毎年12,000人以上の方が亡くなっており、とくに高齢になればなるほど死亡率は上昇します。※15
前立腺がんは、初期の自覚症状に乏しく、進行とともにさまざまな異変が現れます。
予後が良好ながんと油断せずに定期的な検診を受けて、気になる症状があるときは自己判断せずに医療機関を受診しましょう。
参考:前立腺:[国立がん研究センター がん統計]
まとめ
前立腺がんは、50歳以上の男性に発症しやすく、歳を重ねるごとにリスクが増加します。
多くの場合、前立腺がんの初期は無症状であるため、定期的にPSA検査を受けて自身のリスクを知ることが大切です。
また、気になる症状がある際は、直ちに医療機関を受診しましょう。
前立腺がんをはじめ、全身のがんリスクを明確にしたい方には、マイクロCTC検査がおすすめです。
マイクロCTC検査は、1回5分の採血のみで短時間で検査が終了します。
前立腺がんの自覚症状がある場合や、自身が前立腺がん高リスク群に属する場合は、定期的に検査を受受けて、さらにマイクロCTC検査も取り入れながら、日々の健康管理をおこないましょう。
〈参考サイト〉
※1、※2:国立がん研究センター がん統計|最新がん統計
※3、※5、※13、※15:国立がん研究センター がん統計|前立腺
※4:全がん協加盟施設の生存率協同調査|全がん協生存率
※6:サノフィ株式会社 前立腺がんWeb|前立腺がんについて
※7:国立がん研究センター がん情報サービス|前立腺がん 検査
※8:ミッドタウンクリニック名駅|前立腺がんの早期発見に役立つPSA検査とは?
※9:マイクロCTC検査 | 血中のがん細胞を捕捉するがんリスク検査
※10:What’s?前立腺がん|すぐわかるPSA検査
※11、※12:新橋消化器内科・泌尿器科クリニック|PSA検査とは。検査の費用・健診について
※14:公益財団法人 がん研究振興財団|がん統計2024