がんは2人に1人が発症する国民病で、ステージが進行するごとに生存率は著しく低下します。
漠然とした不安を抱えながらも「がん検査を受ける時間が確保できない」「痛みが伴いそう」となどの理由から、がん検査を受けていない方は多いでしょう。
マイクロCTC検査とCTC検査は、採血によって手軽にがん細胞を捕捉できる検査手法です。
検査の流れは基本的に同じですが、捕捉対象のがん種には大きな違いがあります。
本記事ではそれぞれの特徴や違いをわかりやすくまとめ、検査費用の相場もあわせて紹介していきます。
自身に合った検査方法を選び、がんの不安に正しく向き合いたい方はぜひ参考にしてみてください。
採血でがん細胞を捕捉「マイクロCTC検査」
- 1cm未満の早期がん細胞も捕捉可能
- がん細胞を直接捕捉・個数まで提示
- 特異度94.45%の検査精度※2
事前準備 | 不要 |
医療被ばく | なし |
検査費用 | 198,000円 |
検査時間 | 1回5分 |
マイクロCTC検査とCTC検査の大きな違いは「がん細胞の捕捉範囲」
がん細胞は、上皮性から間葉系のがん細胞に進行することが知られています。
間葉系がん細胞は高い運動能力(浸潤・転移)を獲得した、悪性度の高いがん細胞です。
上記を踏まえ、それぞれの検査で捕捉できるがん細胞の違いを見てみましょう。
がん細胞の種類 | CTC検査(セルサーチ社) | マイクロCTC検査 |
---|---|---|
上皮性がん細胞(悪性度が低い) | ◯ | × |
間葉系がん細胞(悪性度が高い) | × | ◯ |
CTC検査は上皮性がん細胞のみ、マイクロCTC検査は間葉系がん細胞のみ捕捉します。
血中に漏れたがん細胞(CTC)を捕捉する点は同じですが、検査結果からわかるリスク度合いが両検査の大きな違いです。
CTC検査の特徴
CTC検査には、主に3つの特徴があります。
- アメリカのFDAが臨床検査を承認
- 悪性度が低いがん細胞しか捕捉できない
- 輸送中に血液劣化のリスクがある
これからがん検査を予定されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
アメリカのFDAが臨床検査を承認
FDAはアメリカ食品医薬品局の略称で、日本の厚生労働省にあたる政府機関です。
セルサーチ社が開発したCTC検査機は、2013年にFDAから臨床検査を承認されています。※マイクロCTC検査はFDAの承認は取っておりません。
検査機から検出されたCTCは、がんが進行せずに安定した期間(無増悪生存期間)や治療を始めてからの生存期間(全生存期間)と関連が認められているところです。
各種生存期間と関連が認められているがん種
- 転移性乳がん
- 前立腺がん
- 結腸がん
海外ではがん検査の標準ツールとして活用される機会も多く、医学研究の進展により精度を高めたCTC検査機も登場しています。
悪性性度が低いがん細胞しか捕捉できない
CTC検査で捕捉できるのは、悪性度が低い上皮性がん細胞です。
がんは「悪性腫瘍」とも呼ばれますが、がん細胞自体は健康な方の体内でも毎日発生しています。浸潤・転移しない良性腫瘍なら、切除手術で完全に除去できれば多くの場合再発しません。
一方、上皮性がん細胞が進行すると、高い浸潤・転移能力を有した間葉系がん細胞になります。間葉系がん細胞は周辺臓器に広がりやすく、健康状態を著しく低下させるがん細胞です。
CTC検査では間葉系がん細胞が捕捉対象から外れるため、悪性度の高いがんリスクを把握できない点には留意する必要があります。
輸送中に血液劣化のリスクがある
CTC検査から正確な検査結果を得るためには、採血後の血液劣化を防ぐ必要があります。
次の3点は、血液を劣化させる主な原因です。
血液を劣化させる原因
- 時間経過
- 温度変化
- 振動
血液は非常に繊細なため、採血から3〜4日経過してしまえば正確な検査結果を出すのは難しくなります。
現状、日本でCTC検査を受ける場合は、海外の検査機関に血液を輸送するケースが一般的です。
検査結果から手術や治療、経過観察などの方針を正確に判断するためにも、国内検査機関の早期整備が望まれます。
マイクロCTC検査の特徴
マイクロCTC検査の特徴は、次の3つです。
- 悪性度の高いがん細胞のみ捕捉する
- 特異度94.45%の検査品質
- 国内で迅速な血液検査が可能
CTC検査の特徴と比較しながら、それぞれの内容をチェックしていきましょう。
悪性度の高いがん細胞のみ捕捉する
マイクロCTC検査で捕捉するのは、悪性度の高いがん細胞のみです。マイクロCTC検査とCTC検査の捕捉対象が違う背景には、CSV(細胞表面ビメンチン抗体)という特殊抗体の存在があります。
CSVは世界有数のがん研究機関「MDアンダーソンがんセンター」が世界特許を持つ特殊抗体です。
従来のCTC検査に利用されるのは別の抗体であり、捕捉対象が上皮性がん細胞に限定される弱点がありました。
CSVは間葉系がん細胞のみ捕捉するため、本当に怖いがんリスクを的確に把握できます。
異度94.45%の検査品質
特異度は、がんに罹患していない正確性を示す数値です。体内にがん細胞が存在しない裏付けになるため、検査後の方針を決める重要な判断材料になります。
マイクロCTC検査とCTC検査の特異度を比較すると、次のとおりです。
マイクロCTC検査 | CTC検査(セルサーチ社) | |
---|---|---|
特異度(乳がん) | 94.45% | 83.35% |
CTC検査の特異度も決して低い数値ではありませんが、マイクロCTC検査は約10%高い94.45%の特異度を誇ります。
細胞レベルでがんを捕捉するCTC検査の技術を向上させ、提示された検査結果から納得感を得られる点がマイクロCTC検査の大きな特徴です。
国内で迅速な血液検査が可能
マイクロCTC検査の血液検査は、国内の検査センターでおこなわれます。
採血後は迅速に血液検査が進められるため、血液劣化の心配がなく、正確な検査結果が把握可能です。
また海外へ空輸するより輸送コストを削減でき、リーズナブルな料金でがん検査が受けられるメリットもあります。
検査費用の相場は次のとおりです。
マイクロCTC検査 | CTC検査 | |
---|---|---|
検査費用 | 約18万円 | 約27〜40万円 |
がん検査を選ぶ際は、検査体制や料金相場をぜひ参考にしてみてください。
がんリスクを正確に判断するならマイクロCTC検査が有効
マイクロCTC検査は、CTC検査の品質を向上させた画期的ながん検査です。捕捉対象が間葉系がん細胞に限定されるため、悪性度の高いがん細胞を特定できます。
特異度も94.45%と非常に高く、検査後の方針に納得感が持てる点も大きいです。
検査結果が陰性なら体内にがん細胞が存在しない安心感が得られ、がんの不安に怯えることなく前向きな日々を過ごせます。
陽性結果が出た場合は血中にがん細胞が漏れ出している可能性が高いため、先手を打ってがんの進行に備えた治療プランが選択可能です。
血液の検査機関が国内整備されている背景も踏まえ、がんリスクを正確に判断したい場合はマイクロCTC検査が有効であると言えます。
▼関連記事:マイクロCTC検査を受けるメリット・デメリットとは?がん検査を選ぶポイントも徹底解説!
まとめ
マイクロCTC検査とCTC検査の違いについて解説してきました。
がん細胞は浸潤・転移能力を獲得すると悪性度が増すため、定期的な検査でがんリスクを把握してくことが大切です。
マイクロCTC検査は悪性度の高いがん細胞のみ捕捉し、国内の検査機関で迅速に血液検査がおこなわれる特徴があります。
納得感を持って検査後の方針を決められるメリットもあるため、がん検査の選択で悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
<参考文献>
がん情報サービス がん(悪性腫瘍)と良性腫瘍